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第168話 F市のラッパー

「フィメールラッパーがいるんだ。 そっちの娘もラッパー?」 「粟生は違うよ。ハコバンのヴォーカル。」  琥珀と五月雨が入って来た。ジュネは五月雨に目が釘付けだ。 「誰?イケてる。」 「この店のバンドのドラムだよ。 メイ先生。イケだろ。」  なぜか、鉄平が自慢そうだ。 「やあ、鉄平。今夜はラップバトルかな? 琥珀こっちにおいで。ウヰスキー飲もう。」  シノとケノがまとわりついて来る。五月雨にも慣れたようだ。 「シノ。オショーが来てるのかな。」  奥からオショーが出て来た。玉梓も一緒だ。 「若いもんの邪魔しないように奥で身を潜めてたのになぁ。」 「オショー、デカいから潜められてないよ。」 「ナナオに言われたくないね。お互い様だ。」 ナナオは元力士。二人とも重量級だ。  DJタイジがノリのいい曲をかけた。 「鉄平が嬉しそう。ああ、事情通か? F市のクラブのラッパーの皆さん、紹介してくれよ。」 「あ、いつもフリースタイルバトルに飛び入りさせてもらってるF市のクラブの『涅槃寂静』(ねはんじゃくじょう)の皆さんです。  全国のバトル大会で上位グループに入る。 ボスの山崎さん。みんなボスって呼んでる。  こちら、犬塚神社の宮司、通称オショー。 この白浜ベースの立ち上げ人の一人。 この辺の事はオショーに聞けば大体わかる。  あと、ボスの隣の美人さんはジュネ。 ジュネもフィメールラッパーだ。 「美人とか、ルッキズム丸出しの紹介はやめて。」 「ごめん。ジュネからお叱りを受けちゃった。 その他、トライバル柄のタトゥーの人たちはラップやりながら紹介するよ。」  ジュネが 「イケてるドラマー、紹介してよ。」  「イケメンっていうのもルッキズムだろ?」    さっそく五月雨の腕を取って抱きついている。 五月雨は長くなった髪をかき上げて腕を振りほどく。琥珀の手を引いて 「僕の嫁だ。琥珀。コスプレイヤーだよ。」  鉄平が 「みんなアニメのエイトドッグス、見てるか? そのコスなら琥珀に任せて。」 「メイ先生ってゲイなんだ?」 「そうだよ。ここは解放区だ。」 「なんか犬が多いね。人慣れしてて、怖くない。 この場所に馴染んでる。」  ジュネと呼ばれた人が、DJタイジの大角に抱きついている。大角は大きなゴールデンレトリバーだから抱きつかれてもびくともしない。

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