「仏教的な名前のチームだねぇ。 何か思想があるの？」 　オショーの好奇心をくすぐる。 「オショーは宮司なんでしょ。 神道か。仏教とは袂を分つ？」 「言い回しが固いなあ。そうか、 ラッパーはボキャブラリーが多いんだね。 　聡、こっちに来いよ。」 　オショーがボスに聡を紹介する。 「痛車制作の聡。 ボスは『荒ぶる魂』の方が知ってるかな。」 「ああ、あの『荒ぶる魂』、 須佐之男命、知ってます。」 　思いがけない所で聡の爪痕がたどられた。 「涅槃寂静、を名乗ってるのは、死を身近に感じているからだ。」 　DJタイジか皿を回し始めた。腹に響くビート。 ーー煩悩の炎が燃え盛る 　　怖気付いて後ずさる 　　諸行無常なんだろ 　　悟りの境地　不安な気持ち 　　煩悩を吹き消すのは簡単じゃねぇ 　　やり遂げられれば感嘆の声 　　本能は燃え盛る火花　一体どこへ 　　一番小さい数ーー 　ボスがノリよく口火を切った。 ーーサトリ　悟らなきゃいけないのか 　　まだイケない不感症の女みたいに 　　涅槃は寂静だって 　　半端に静寂なんかいらねぇ 　　無理に煩悩を吹き消すのはおまえか？ 　　生殺し皆殺し　金と鹿ーー ーーイケナイオマエヲ 　　イカした俺たちが 　　イカしてやるよ 　　涅槃は方便　仏陀は言ってる 　　早く抱いてとベッドが待ってる 　　最高なのは俺の恋人 　　おまえはこの世の迷い人 　　煩悩の炎を消して 　　悟りの境地に行くのはまだ早い 　　おまえもイクのはまだ早いーー 　サトウが飛び入りした。セクシーなリリックだ。聡は顔が赤くなる。 　タカヨシ（サトウ）は聡のネットでの書き込みを読んで、ある意味覚醒した。 　寂しい事を知ってしまった聡の孤独を思うと切ない。地球は流刑地なのか。 　人間は皆罪人か？ イエスは我々を生まれながらに罪深い、という。