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第170話 涅槃寂静 2

 『涅槃寂静』のメンバーは仏教的な名前が多い。阿修羅と名乗った男は、ヒョロっと背が高く飄々とした雰囲気だった。  まだ少年の面影を残す。 「こんちは、オレ阿修羅、17才。 ーーオイラ レペゼンF市。   喧嘩上等 気分は上々   諸先輩方 気分はガタガタ   生きてんだよ オイラ生きてんだよ   死ぬ話ばっかり ここはバカばっかり   行ったこともないニルヴァーナ   イッタことないチェリーボーイ   今まで生きてて良かったことなんか   一つもねぇ   大人の意見なんか役に立った事   一つもねぇ   嘘つきなんだよ おまえらは   背中に染みついた貧乏神   俺たちは背負ってるーー  阿修羅は名前の通り過激だった。 サイコが飛び出した。 ーーアタシはサイコ レペゼン九十九里   苦渋に満ちた人生 アタシの本能   くすぐる阿修羅ちゃん   お互い背負うものは違うから   魂を消費する物はいらないから   毎日海を眺めたら 割れたガラスも   丸くなる 背中の貧乏神なんか   海に飛び込んで溺れさせろ   ここにあるのは熱いハート   そこにあるのはキツいヘイト   どっちがいいなんて聞かない   スィートホーム白浜ーー  まだまだラップバトルは続きそうだ。楽曲に合わせて何人かが対戦した。 「ケンカやりたくって仕方がないって顔してるね。」   サイコが阿修羅に話しかけた。 「姉さんかっこいいね。オレ、惚れちゃう。」 「あはは、惚れた、とか興味ないね。 粟生ちゃんは?」 粟生はナナオにべったりだ。 「はて、いつの間に? ま、いいか。 アタシにはドウセツ君がいるからね。」  フレンチブルのドウセツ君がサイコを守るようにくっついている。 「タカヨシ、一緒に帰ろう。」  夜も更けてきた。タカヨシ(サトウ)は少しお酒を飲んでいる。 「酔っ払いか?ウチ来るか? 泊まってもいいぞ。」 「ああ、おまえのウチ,行きたい。」

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