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第175話 タカヨシと犬

 タカヨシも何か聡の知らない事を知っているようだ。犬がしゃべるって? 「長く人間と暮らしていると動物はみんな言語を解するようになる。ペットを飼っている人なら、みんな感じる事だろう。  源八は俺が人としゃべらないのを不思議に思ったそうだ。人間同士なのにって。  ある時、犬の源八の方から話しかけて来た。 俺は驚いたけど、安心して話が出来ることに気がついたんだ。」  タカヨシは子供の頃から母親とは普通に会話出来た。源八も俺にとって母親と同じ、身内だった。医者は「場面緘黙」は心理的な問題だ、と言った。時がくれば喋るようになる、と。  学校は馴染めなかった。 誰とも口を聞かないのは楽、だった。  ある日、シュナウザーを飼うことになった。 ペットショップで、目が合ったのだ。  声が聞こえた。 「ねえ、僕を連れて行って。」 言葉が直接、心に入って来た。 「僕、おまえの家に行く。もう友達だよ。」 犬は、自分を源八と名乗った。ずいぶん古風な名前だ。 「母さん、こいつは源八って言うんだって。」 「げんぱち?どんな字を書くのかしら。」  タカヨシが、候補の名前を書き出した。 元八、玄八、現八、弦八・・・ いくつか紙に書いた文字を見て源八の字の上に足を置いた。 「よしわかった。源の八、で源八だな。」 そんな経緯で名前が決まったそうだ。  相変わらず学校では誰ともしゃべらないタカヨシだった。  鉄平が遊びに来てくれても話はしない。だが友好的な時間を過ごして鉄平とは親友になった。  そしてナナオを連れて来た。ひきこもりなのに友達は増えた。  聡は不思議に思う。 「犬がしゃべるのはお母さんも知ってるの?」 「いや、知らない。賢い犬だとは思ってるみたいだ。」 「どうして、玉梓さんは犬がしゃべる事を知ってるんですか?」  聡は以前から疑問に思っていた事を,色々思い出した。ファンタジーだと勝手に都合よく解釈していた事。 「漫画、エイトドッグスの中で、和彫り野郎石田をあの橋に誘い込んだのは、玉梓さんですよね。  あなたは何か知ってるんですか?」 オショーが話を聞いていた。 「荒ぶる魂、のスサ君なら気付くと思ったよ。」

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