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第176話 秘密

 漫画エイトドッグスのアニメ化は順調だったが現実だとすると、腑に落ちないツッコミどころ満載の話だった。  遥か昔からこの神社は特別な場所だった。 誰にも知られず、存在し続ける黄泉比良坂に通じる道。あの「裏の橋」。  玉梓なら何か知っているのか。 「オショーは全てご存知なんですよね。」 「そんな事はないよ。生身の人間だ。 もう老人だしね。」  オショーの話は興味深い。 「なぜ、寂れる一方だったこの白浜海岸が、こんなに世間の注目を集める事になったのか、キミたちは不思議に思わないか?  私が答えを知っている訳じゃない。何でもわかると思わないでくれ。あくまでも、私の私見だ。」  オショーは話し出した。 犬塚神社の成り立ち。それはたかだか数百年の事だろう。この町が村だった頃、人々は鎮守として神社を建立したのだろう。  なぜこの場所が選ばれたのか、それはあの「裏の橋」があったからだ。  あの橋を渡った者は、行きて帰らぬ、と言い伝えられた。  漫画では、石田みっちゃんが帰って来たが。 彼は実際に帰って来て、その時の事をまことしやかに吹聴している。  今はヤクザになってしまったが、周りからは 「ホラ吹き」と思われて可哀想な感じだ。 「タカヨシと聡は、八房に会った事はあるのかい?」 「え?八房って実在するんですか?」 「多分、犬たちはみんな知ってると思うよ。」 「曲亭馬琴の八犬伝に出て来る勇敢な犬ですよね。敵の首を取ってきた、という。」 「500年も彷徨っているんだよ。その思念が。」 「からかわないでくださいよ。 すぐファンタジーにするんだから。」 「現実、こうして生きている事は、全て納得出来ているのかい?  じゃあ、謎、や、不思議、っていう言葉はいらないね。  現代の自然科学は、何でも検証して、全てわかっているような錯覚を与えて来る。  学校教育がいけないね。答えなど、ない事ばかりなのに。」 「話が広がりすぎて、論点が曖昧になった。」 オショーが語る。 「はは、私の文系の頭では、ファンタジーになってしまうね。  理系の数学教師、五月雨を呼ぼう。」  神社の別棟になっている離れからメイ先生が出て来た。 「五月雨の見解も聞いてみよう。」

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