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第177話 五月雨の考察

 五月雨はオショーから話を聞いて、いくつかの問題点を挙げて行った。 「エイトドッグスのストーリーは、現実には謎に満ちた部分が多いな。  まず、裏の石の橋。神話の黄泉比良坂だと言うんだね。今でも神社の敷地に存在している。  そこに石田を誘い込んだのは、母さんだと言う疑問。母さんは何者か?  そして犬がしゃべる事、と思念だけの八房の事。とりあえずその3点かな?」  さすが、元教師だけあって、わかりやすい。 「検証し難いことが多いな。 君たちの犬に聞いてみてよ。」  源八とシノとケノが寄ってきた。聡の顔を見ている。ここにいる他の者たちは、犬がしゃべる事は日常だった。  源八が聡の心に語りかけた。 「やあ、聡。タカヨシと愛し合ってるんだろ。 タカヨシに恋人が出来て僕も嬉しいよ。」 「えっ?今オレに話しかけた?源八!」 「やあねぇ、私たちだって仲良くなりたいのよ、人間と。  あなた、小次郎にひどい事したでしょ。」 なぜかシノとケノに叱られた。 「ごめんなさい、っていうか、なんだよ、この茶番。オレは信じられないよ。漫画みたいだ。」  五月雨が落ち着いて何事もなかったかのように次の問題点に移った。 「母さんの事は、本人に聞こう。」 「あら、私はあまりにも長く生きてきたから、 ほとんど忘れているのよ。  ところどころ覚えているわ。あの日は石田三成という人が来たので,案内しただけよ。」  オショーが代わって 「黄泉比良坂の話と繋がるから私が話そう。  オショーの話はあまりにも荒唐無稽だった。 「裏の石の橋、はあの世への入り口だと言われている。橋の入り口に大きなラクダがいる。  一枚岩で出来た精巧なラクダの顔だ。」  見に行く事になった。 みんなでゾロゾロ歩いて行った。  広い神社の敷地を歩いて行った。外から見るより広く感じる。  社殿の裏は薄暗く寒々しい。 「こんな所は初めて来たよ。」 「いつも、神社の境内を走り回ってるけど、 こんな橋があったの、知らなかった。」  犬たちが口々にワオワオ言っている。 「なんか気の流れが違うみたいだ。」  聡はタカヨシの手を握った。 「大丈夫だよ。」 タカヨシはやさしい。

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