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第180話 玉梓の事

 スサの書き込みが真理を見せていた。 答え合わせをしてくれる存在はいない。  オショーが玉梓に聞く。 「私は何でも知っている、と思わないで。 ずいぶん,長く生きてしまった。  なぜかある年齢に近づくと、もどってしまうようで、記憶も曖昧になるから。  特異点とでも言うのかしら。  生命の本来の姿は死んでいる状態。人間が「死」と考えているのは、生命のほとんどを占める状態。生命の本質は魂。精神。それ自体終わりも始まりもなく、宇宙空間に充満しているような、空、のような。  この地球は特異な星。こんなにも生身の生き物で犇めいている。死んでいる状態が正常なのに、この星ではみんな生きている。  なぜ、こんな星があるのか、誰にもわからない。『神』というツールを使えば、わかりやすいけど、真実からは離れていく。  人間は『神』を使うのが好きよね。『神』に丸投げ。  生きるのは苦しいから『神』を大量生産して思考停止する。 「死」の概念も人間が作り出したものだし。  地球上の他の生き物は「死」についてあまり考えない。  地球という星が生まれて,人間という肉体を持った生命が地球を蹂躙している。それに気がついていない。地球がどうなろうと誰も変えることは出来ないでしょう。  でも、いろんな事を考えて頑張っている人間は 愛おしい存在だわ。  それで私はこの星に長居しているのかしら。 魂は普遍で時折りバグ、のような事もあるみたい。私はバグ、かな。  わかりやすく言っただけです。 誰の意思でもなく、時の流れでもなく、死ぬとか、生きるとか、そんなのはないのよ。」  オショーの言っていた事は人間が主体だったが、玉梓の言う事は、魂、「死」の向こう側だったらしい。  信じられない事だが、玉梓は気の遠くなるような長い時間を生きている。  その時間の中に様々な出来事があっただろう。 そして玉梓は言った。 「ブライアンが死んで40数年過ぎたけど、ずっと五月雨と私を見守ってくれたのよ。」 あの橋から現れて見守ってくれた、という。 「あの橋のおかげで寂しくなかったの。 あの世とこの世を繋ぐ橋ね。  宇宙空間の一つの「場」なのよ。」

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