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第191話 玉
聡とタカヨシは神社に行ってみた。犬たちに聞いてみたい。
シノが走って来た。神社に住んでいる。源八が声をかけた。
「シノちゃん、他に誰か来てる?
タカヨシがみんなに聞きたい事があるって。」
シノは聡とタカヨシを嗅ぎながら
「いつも、何かを聞き出そうとするね。
秘密もあるのに。」
「秘密って?ますます聞きたいな。」
源八がスッと玉を出した。信、の文字が見える。
「ああ、それね。ほらっ。」
シノの手にも玉があった。孝、の文字だ。
「器用だなぁ。玉を持つのはその手じゃ難しいだろ。」
「みんな持ってるのか?携帯してるの?」
「犬がしゃべって、玉も持って、不思議な光景だ。」
「信じられないなら、みんな集めて聞くといいわ。玉を出して見せてくれるわよ。」
「今度みんなが集まるのはいつだろう。」
オショーに聞こうと社務所に行った。普段オショーは神社にいるのか、宮司の仕事をしているのか。奥からデカい身体が顔を出した。
「よおっ、免許取れたんだってな。おめでとう。」
「はい、ありがとうございます。
今日は忙しくないんですか?」
「午後からベースに行くけど。」
源八はシノと走り回って楽しそうだ。
「げん、玉見せて。」
どこからか、玉が転がり出て来た。
「信、と書いてある。シノちゃんも持ってるの?」
ほら、とばかりに出した。
「孝、の文字だ。他の犬のも、知ってる?」
「孝、仁、悌、義、礼、智、忠、そして信。
八犬士がそろったね。他にも小次郎とディーキーがいるが、玉はない。十犬士になるなぁ。」
オショーが説明してくれる。
「ポケットもないだろうに、みんないつもどこに隠しているんだ?」
「尻尾の中とか、色々よ。」
「この神社は謎だらけだ。」
「神社は結界にもなるからね。
八房が結界に入れないって困ってるぞ。」
オショーが言った。
「そう言えば、この頃、八房を見た、という話を聞かないな。」
聡は見た事がないから、半信半疑だ。
「玉のことなら、馬琴の八犬伝に詳しく書いてあるよ。」
「作り話でしょう。物語だ。
妖怪とか、化け猫とか、あやかしとか、が出て来る。実在するわけないでしょ。」
聡が抗議する。
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