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第195話 南総里見八犬伝

 三郎とジョー先輩が神社にやって来た。 「やあ、みんなお揃いで。 小次郎と荘助が神社に行け、ってうるさくて。 今日はオフだったから来てみたら、みんないるんで驚いた。」  玉の話から、八房と伏姫の話になった経緯をずっと二人は聞いていた。 「僕、南総里見八犬伝を読んだから、玉面の事も知っていました。鋺大輔の事も。  でもあれは曲亭馬琴のフィクションでしょう? 似たような所はありますが、全部当てはめたら無理がありますよ。  荘助は玉、持ってるけど、小次郎は持ってない。フェアじゃないな。」  現実に存在している玉梓を無理矢理、話に当てはめるのは馬鹿げている。  みんなは玉梓の年令を知らない。不死に近い事を知る由もない。 「馬琴っていうのは洒落のわかる人だったんでしょう。」  三郎の一刀両断のような感想に、集まっていた者たちは冷静になって来た。オショーが 「古い文献を読み漁ってこじつけようとしてしまったな。すまんね。」 「私も自分が妖怪のようで困ったわ。 狸の化身、とは。」 玉梓が苦笑いしている。  そばで五月雨に寄りかかって話を聞いていた琥珀が 「ケノが、結界の事を気にしているんだけど。」  走って来たトイプードルのケノを撫でてやっている。  愛くるしい犬は、その瞳に何かが見えているように、虚空をにらんで、小さく唸っていた。  今、ここに八房がいたら、房州犬の素晴らしさを伝えることが出来たのに、とオショーは残念に思った。シノが寄ってきてオショーの手を舐めた。 「今日は何故かみんな集まった。 何かやろう、ってことかい?」 「夜はロックバーでライブをやるよ。 キングクラッシャーの連中が来るって言ってたから。」  謎は少しも解明できていなかったが、みんなそれぞれ自分なりの解釈をしていた。 (馬琴が種を蒔いた話が、現代にも語り継がれている、って事か。) オショーは諦観している。  それでも、玉梓がいる。 20数年前に、五月雨の帰国を待って、オショーと玉梓は結婚した。  夢枕でブライアンが結婚を勧めたのだ。二人は秘密を抱えて、晴れて夫婦になっている。  白浜ベースは順調に見えていたが。

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