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第199話 フラメンコ
ラップバトルはあまり盛り上がらなかった。
また、犬遠藤さんのスパニッシュギターが聴きたい、と声が上がる。
哀愁の漂うギターに合わせて、あの涅槃寂静のボス、ピアスだらけの山崎さんが歌い始めた。
フラメンコを朗々と歌う。
「カッコいいな。」
「すごい。」
粟生が歌に合わせて踊る。いつの間にか手にパリージョ(カスタネット)を持って小気味よいリズムを鳴らす。
ボスがコブシのきいた独特の唸るような歌い方、カンテで圧倒する。
犬遠藤さんのギターのゴルペ、叩くような弾き方がカンテを引き締める。
「オーラ、オーラ!」
店の中に一気にアンダルシアの風が吹いた。
「ヤァヤァ、オレ!
店がタブラオ、になったよ。」
咲耶さんが拍手している。
「意外とフラメンコを知ってる人が多くて驚いた。ボスはカンテ、やってたのかい?」
「ああ、フラメンコが好きでスペインにも行ったよ。」
他の涅槃寂静のメンバーは知らなかったようだ。
「ボス、素敵だった。アタシこんなボス初めて見た。」
ジュネがうっとりしている。
オショーが
「フラメンコは元々歌が主体だからね。
粟生ちゃんも意外な才能があるんだね。」
パリージョを鳴らして、得意げにポーズを取った。
「オレ!」
「粟生、かっこいい。」
プシュッ!
咲耶さんの奢りでカヴァ(スペインのスパークリングワイン)が何本も抜かれた。
下○沢の亮たちも感激している。拍手しているイケメンが粟生に近づいて来た。
「粟生ちゃんて言った?
歌もいいけど、今夜のフラメンコすごく素敵だった。」
肩を抱いて来た。
ミカドが寂しそうに見ている。
「あーあ、亮ってバイ、だからね。
見さかいないな。)
豪快なパルマ(拍手)で場を締めたのはオショーだった。
合わせて粟生がスカートの裾を摘んでサパテアート(足音)を響かせる。
「今夜はおしまい!もう店じまいだ。」
みんなは名残惜しそうに帰って行った。
亮が粟生の手を取って離さない。ナナオが睨んでいる。
「やめろよ、亮。番犬が見てるぞ。」
ヒロシがナナオを指差した。
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