201 / 256
第201話 狛犬
シノは下に置かれた勾玉を咥えると、八房の首に付いている立派な首輪に挟み込んだ。
勾玉はその首輪の装飾品としてピタリと収まった。元からそこに付いていたかのように。
「凄い。これは元から八房のものだったみたいだ。八房にはもう結界は無くなったんだね。」
犬たちは大喜びしている。
「あ、狛犬!」
粉々になったはずの狛犬は、何事もなかったかのように元に戻っていた。
「この狛犬はこの勾玉を預かっていたんだね。」
「一体何のために?」
「僕たちは、玉持ってるだろ。」
源八が思い出したように言ったのでみんなは不思議な玉を一つずつ出した。
仁、義、礼、智、忠、信、孝、悌、の玉を一つずつ。どこにしまっているのか。いつも身体に持っているらしい。
「そう言えば、八房は玉、持ってないもんね。
この勾玉は八房のものなんだね。」
「あの橋の向こうにいけば伏姫に会えると思うんだ。」
あの裏の小さな橋、そこに行けば、とみんなが考えた。
「八房だけ結界で入れなくしたのは誰?
結界がなければあの世とも繋がれるの?」
シノが疑問に思っている事を訊く。
「あの石の橋はどこへ通じているのか?」
シンベヱが八房を見る。
「あの世に通じているのは間違いないと思う。
でも、みんなが思うあの世とは違うんだよ。
イタコとは違う。会いたい人にすぐに会える訳ではないだろう。伏姫の行方を知りたい。
簡単にあの世とこの世を行ったり来たりできるとは思えない。」
みんながガヤガヤ言ってる間に八房は石の橋の向こうに行ってしまった。
「みんな、私が戻るまで、ひとまず家に帰ったほうがいい。私なら大丈夫だから。」
と言う声を残して、八房は行ってしまった。
八房は思念になって石の橋の奥へ入って行った。黄泉比良坂の事は知っている。
鋺大輔に撃たれて、一度死んで思念がここを通った記憶もある。すぐ後に伏姫も自害して思念がついて来た。
二人は死んでから一緒になれたのだが、鋺大輔の怨念が二人の邪魔をする。
伏姫が犬の化け物に誑かされた所を、仇を打ったのだ。八房と伏姫が、愛し合っていたなどとは絶対に認めない。
ともだちにシェアしよう!

