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第203話 八犬士
犬たちは鋺大輔の怨念を嗅ぎ取って、嫌な気持ちになった。
「もう幽霊みたいなもんでしょ。俺たちに何かしてくる力があるのかな。」
シンベヱが心配している。
「実態は無いようなものだから、無視して置けばいいんじゃない?」
シノが言う。
「八房は伏姫に会えたから、成仏したんだろ?」
「成仏ってちょっと意味が違うな。
あの橋から戻って来たしね。」
「八犬士を助けるために戻って来たんだって。」
「鋺大輔の怨念は強いのかな?」
オショーにもアドバイスをもらおう、と言う事になった。
「確かに死んだ者はそんなに影響力は無いはずだ。刀も無い。力も入らないから怖がる必要は無い。」
玉梓に聞いてみた。
「ただの怨念の塊よ。鋺大輔が納得すればいいのよ。八房と伏姫の愛が本物で、八犬士たちが二人の愛の結晶だ、と認められればいいんじゃない?」
確かに言ってる事はそうだけど、深い怨念を晴らすにはどうしたらいいのか?
「シャーマンの力で呼び出して、命令した殿様から話をして貰えばいいのね。」
玉梓がシャーマンになる、と言い出した。
オショーが、危険だからダメだ、と反対する。
「ほほほ、私は死なないのよ。大丈夫。」
犬たちは話し合ってラクダの所に集合した。
ラクダに玉梓は
「鋺大輔の思念を呼び出せるかしら。」
「500年も拗らせているから、危険ですよ。
いいんですか?」
オショーが不安そうに見守る中、ラクダは怨念の塊になった鋺大輔の思念を呼び出した。
玉梓はもう一つ、ラクダに魂を呼んでもらった。
「拙者に用とは何者だ?」
「鋺殿、お久しぶりです。貴殿を縛る、里見殿の命令を解いて差し上げましょう。」
そういうともう一人、偉そうな殿様が現れた。
主君、里見吉実の姿だった。
「呼び出されて不愉快じゃ。
鋺大輔、伏姫は許婚だったが、もう解消じゃ。
お主もしつこいのう。もう500年も経つのじゃ。
それに子供たちは犬じゃから、お主は父親ではないわ。忘れろ。」
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