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第208話 事件

「聡、起きられるか?」  初心者同士、加減がわからない。激しすぎたセックスに、受け、はツラいだろう。髪を撫でてくれる。 「聡、オレたちやり過ぎだね。可愛いなぁ。 離したくない。」  少し眠った。ゆっくり風呂に入ってタカヨシが聡を洗ってくれる。掻き出して綺麗にしてくれる。ゲイビデオで学んだらしい。後孔をマッサージしてくれる。  大人になってからは、親にだって見せたことはない場所を曝け出す。  お互いに股間に男のシンボルをぶら下げている事に何の違和感も無い。唯々愛しいのだ。 「抱き合うたびにこんなに好きになる。」  遅くなった。追加料金を払って「バリハイ」を出る。痛車のインプレッサでホテルを出る所を見ていた人がいる。  目立つ車で国道沿いのモーテルから出て来たのはあまりにも迂闊だった。  白浜ベースに人が集まる。賑わうのはいい事だと思っていた。町おこしになる。  行政の協力もあって、図書館カフェは運営されていた。三階建の箱物を市の予算で建ててもらったのだ。血税、という縛りはある。  ゲイのカップルが切り回している事を面白く思わない者もいる。  初めは、今流行りの「多様性」云々で、物分かりの良さそうな事を言っていた行政も、この所、難色を示し始めた。  そしてあの事件が起こった。 白浜ベースの主な施設は、大人から見れば胡散臭いものが多かっただろう。  コスプレショップ。咲耶さんのロックバー。 コージさんのサーフショップも長く地道にやってきたが、この所、カッコだけのサーファーもどき、が増えて騒いでいる。ナンパ目的が煩い。  キッチンカーも、美味しい可愛いパン屋さんと名物のシルク綿あめが人気だった。   古くからやっていて地元に馴染んでいるケバブ屋のイムランが初めにやられた。  ドネルケバブのグリルを弾き倒されたのが発端だった。  その日は朝からバイクと車が集合して、輩が騒いでいたので警戒していた。  まだ、白浜ベースには建設中の建物が幾つかある。ベース自体も完成してはいない。  共通のコンセプトであれば、出店はわりと自由だった。

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