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第213話 チャイマ
家に帰って来た。琥珀が首に抱きついてソファに座った五月雨の膝に乗る。
「メイ、もう怖い事しないでくれよ。」
「ああ、ごめん。手加減出来なかった。
相手にしないように、と思ったんだけど。
車をやられたら頭に血が上った。」
優しくくちづけしてくれる五月雨の、どこにそんな暴力が潜んでいるのか。
「白浜ベースはどうなるんだろう?」
「ああ、取り返しがつかなくなる前に、オショーが何か考えるだろう。」
数日後、仲間内でオショーを囲んで話し合いが持たれた。
あのキッチンカーはずうずうしく営業している。
「チャイマって何?」
「チャイニーズマフィア。怖い組織だ。
都会の話だと思ってたが。」
「それだけ、この白浜ベースが金になる、と
判断したんだろう。」
「まだまだ食いもんに出来るってか?」
「白浜ベースは商店会とか作った方がいいんじゃない?」
「会ならあるよ。サーフショップのコージさんが引き受けてる。昔からあるんだ。」
「金平たちは入ってないでしょ。」
「今に無理矢理入ってきそうだな。」
「金平のねらいはなんだ?」
「金だよ。ここは金の匂いがするんだろ。乗っ取って、最終的には日本を手に入れる。」
「そんな大それた事!」
「商店会に入ってないと認めない事にすれば。」
「こっちが排除したって難癖つけてくるな。
奴らしつこいから。」
「あああ、どうしたらいいんだろう。」
「様子を見よう。弱腰みたいだが。」
オショーの提案で、しばらくいつも通りの仕事をする、と決まった。
彼らはそんなに気が長くなさそうだ。
案の定、荒らし始めた。
ベースは海岸の側に駐車場がある。津波対策の高い有料道路の壁があり、その途中に何ヶ所か通路のトンネルが有る。
そしてビーチロード側に白浜ベースと銘打って商店が出来ている。コスプレショップやロックバー、サーフショップやいくつかの建設中の建物がある。まだまだ構想途中なのだ。可能性の宝庫だ。少し離れて図書館カフェがある。三階建てで有料道路の向こうの海が一望だ。
ラッパーが集まったり、若者の集まる企画を打ち出してネットでも話題になっている。
一見ヤバそうなファッションの若者が集まってくる。
「チャイマってニュースでやってる、新宿辺りで問題起こしてる半グレ集団の事?」
「いや、もっとヤバい組織だ。
マフィアって名の通りの犯罪集団だ。」
「奴らは何でも手に入れる。手段を選ばない。」
「臓器売買とか、児童ポルノとか、薬物とか、
裏の仕事だ。白浜ベースには必要無いものだ。」
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