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第216話 妖博覧会
キッチンカーの集まる飲食スペースがある。
人気のシルクわたあめや、フレンチトースト、
そしてイムランのドネルケバブがある。
どれも500円前後で食べられる。コスパの良さが人気だった。
その場所に割り込んでそびえ立つような、シボレーのワゴン、エクスプローラーが幅を利かせている。
「お腹が空いてもここのバーガーは買わない。
たいした違いは無いのにバカ高いんだ。」
「マックのセットがいくつも買える値段だ。」
自転車で来た近所の中学生ががっかりしている。
『無頼庵』を覗いたりしてうろついていると、
白浜中の先生たちが来た。
「あ、体育の阿南だ。」
「おい、おまえたち、何やってんだ。」
「何もしてないよ。
妖博覧会(あやかしはくらんかい)を見に来たんだ。」
近頃出来た面白そうな店の事だ。
フレディの友達のジャンボちゃんがやっている。
モノを売る、と言うより懐かしい昭和の風俗を再現しているような、一種の私製博物館だった。
入場料400円で中を見学出来る。懐かしいおもちゃ屋さんのようだ。
戦争の記憶を今に伝える貴重な物も展示している。古い民宿を改装して、迷路のような建物が、子供たちに人気だった。
「こんにちは、白浜中学の者ですが、パトロールしてます。
ここは変な物、売ってないよね。」
学校にタレコミがあったらしい。子供たちに薬物や、猥褻な図画を展示販売していると。
ピンクの髪で女装しているジャンボちゃんが怒りの声を上げた。
「何ですか?
私は昔の日本の良さと、戦争の悲惨さを、展示して子供たちに知ってもらおうとしているだけですよ。社会科の授業にも参考になるでしょう。
薬物なんてとんでもない。昨日も東○警察が来て、店の中を荒らして行ったのよ。
この町は、文化を守る気がないのね!」
「これは失礼しました。
子供たちを見守っていただいてありがたい。」
阿南先生は同行した女性教師と、『無頼庵』の方へ出て行った。
「メイ先生、久しぶりだね。」
「あ、阿南先生。今日は何か?」
「いや、不穏な噂が流れてきてね。
ちょっとパトロールだよ。」
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