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第217話 妖博覧会

 妖博覧会は面白い店だ。店と言っていいのか。所狭しと様々なものが並んでいる。  中は、テーマ別に個室に仕切られて順路の矢印が示されている。  よく集めたものだ、と感心する昭和の家電製品。懐かしいお茶の間が再現されていたり、お宝の骨董品が集められていたり。  一角には駄菓子コーナーがあって子供たちのお小遣いで買えるのが人気だ。  まじめな取り組み、悲惨な戦争を忘れないように写真が展示されている部屋がある。  サブカルチャーの部屋もある。絶版になった薔薇十字社の書籍が並んでいる。  琥珀が五月雨と来た時、ゴシックの代表的な本と、あの森茉莉訳の「マドモアゼル・ルウ・ルウ」があって感激した。  図書館とは一味違った、まさに博物館だ。 「図書館とならんで、白浜の文化の象徴として 大切な場所だね。もっと脚光を浴びるべきだ。 行政が守るべきだ。」 五月雨も絶賛した。  あの醜・金平が目をつけた。 いきなり輩を連れて入ってきて 「おお、ここはあの今はなき香港の九龍城を思わせる。いいねぇ、この混沌。  何を持ち込んでも、何を捌いてもバレないね。」 「なんだよ、あんたたち。ドカドカ入ってきて。 その辺のもの壊すなよ。おい!」  傍若無人に入って来た輩は、古き良き時代、なんてものには興味が無さそうだ。展示品を荒っぽく手に取って見ている。 「あ、これ懐かしい。」  手に取ったのは「きいちのぬりえ」とサクラクレパスだった。 「ガキの頃、おふくろが大事にしてた。 俺、クレヨンで塗りつぶしたんだ。 泣かせたよ。 売ってくれんの?これ売り物? 母ちゃんに買ってってやろうかな。」 一冊300円と表示されている塗り絵を手に取った。「よいこのピクニック」と題が書かれて中は楽しそうなご馳走を囲んだ可愛い女の子たちの絵だった。  親孝行な奴もいるようだ。ジャンボちゃんは気を良くした。  後から入って来た金平の手下が 「何だ何だ、貧乏臭えな。こんなもん並べてんじゃねえよ。」 と、片っ端から外に放り出した。 「やめろよ、商売モン壊すんじゃねぇ!」 女装に似合わない低い声でジャンボちゃんが怒鳴った。  金平がその男を殴り飛ばした。 「行儀良くしねえと、太平洋に沈むよ。」

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