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第222話 猫

 222話なので猫の話をしよう。 三郎は、ここに引っ越してくる時、犬一匹と猫三匹と一緒だった。  犬はみんなが知っている小次郎だ。図書館カフェにも連れて来ている。ジョー先輩の荘助とも仲がいい、賢い犬だ。  サブの家の猫は家の外にも自由に出ている。しかし、猫はあまり遠くには行かないようで、白浜ベースを知らない。ここまでは来た事がない。  引っ越して来て一年位で17才の福ちゃんが虹の橋を渡った。体力的に引っ越しはつらかったのかもしれない。  その前にブルースという猫がいた。9才で事故で死んだ。  今いる二匹は前に住んでいた多摩川で保護した。たぶん兄妹。オスとメスだ。  二匹とも去勢、避妊手術は済んでいる。 恋の季節になると家の周りに猫の声が多く聞こえる。ウチの二匹は恋を知らない。  人間の都合で生殖能力を剥奪したのだ。母は、「不幸な仔猫を増やさないように。 一時の情けは彼らを幸せに出来ない。」 と言い切る。  だけど、三郎は思う。自分が恋をして初めて、恋する機会を奪った猫たちに申し訳ないと。  聡とタカヨシだって、三郎とジョーだって子供は作れない。必要ないと思っているが。  裏庭の猫たちは毎年お正月のころから「アオーアオー」という声がする。切ない声だ。  野良猫社会は完全な母系でオスは子育てにほとんど無関心だ。  彼らの性行為はメスがつらそうだ。その度に排卵するから、その季節に交尾すると妊娠する。父親違いの子供を同時に数匹身籠るらしい。  お母さん猫が一人で仔を産み、一人で育てる。 人間のように父親が子育てを手伝う事は滅多にない。生き物はいつも、女の犠牲の上に成り立っていると思う。  人間が手を貸そうとすると野良のお母さんは、育児放棄してしまう。下手に手を出してはいけない。  三郎は小学校の時の事を鮮明に覚えている。ウサギの当番だった時のこと。  生き物係は人気で、順番に当番が回って来た。ある時、学校で飼っていたウサギが子供を産んだ。ウサギ小屋の奥の薄暗い所で子供を守っていた。先生が 「可愛いウサちゃんの赤ちゃん、みんなで見てみよう。」 と言って奥から数匹の生まれたての赤ちゃんウサギを取り出して、みんなが触れるように平べったい箱に入れた。

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