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第228話 痛車と犬たち
痛車が並んでいる様子は壮観だった。
「亮のBMW、痛車になったんだね。
聡のミラとタカヨシのインプレッサ、
何と言ってもメイ先生のGTRがすごいよ!」
「綺麗に直ったね!」
金属バットでひどく破壊されたのだ。
他にも痛車にしたお客さんはいる。
みんながエイトドッグスのアニメを宣伝してくれている。
犬たちも海岸を走り回りながら、遠巻きにして見ている。
波打ち際に座って毛が濡れるのも気にしないで犬同士、話し込んでいる。
「この頃あんまりしゃべらなくなった、って琥珀に言われたの。」
「うん、オレも鉄平に言われた。」
シンベヱが言う。
「元々無口な俺はなにも言われないよ。」
イタグレの小文吾は言う。ナナオの犬だ。
犬たちにも変化はあった。
人臭い犬たちだ。状況の変化には敏感なのだ。
「変な輩は相変わらず、いるね。
人間たちを守って行かなければ。」
「もう八房はいないんだね。
声も聞こえない。」
シノが寂しげに言う。
「またいつか巡り会えるだろう。」
一方、人間たちは・・・
「またラップバトルやろうよ。」
亮たちが涅槃寂静のボスにバトルを申し込んだ。
犬たちは海岸に集まって、ずらり並んだ痛車を眺めている。何か感慨深そうだ。
「何かが一つ解決したように見えても、まだ生命は繋がっていくんだ。
日常に押しつぶされても終わらない。」
「哲学する犬、だな。無情にも日常は続いていく。」
道節君が言った。
夜になってフラメンコギターの哀愁漂うメロディが聞こえて来た。
咲耶さんとジョーさんで、デカいパエリアを作ってみんなにサーブしている。
また、カヴァが何本も空けられた。
「僕はシェリーをもらうよ。
ティオペペ。琥珀も飲むかい?」
五月雨は、並んでグラスのシェリーを飲み干している琥珀を心配そうに見ている。
「大丈夫かい?酔っ払いは知らないぞ。」
「うん、今夜はメイに甘えたい。
この所、俺にはしないけど、メイは暴力的で、そんな仲間ばかりだったから。」
「ああ、ジムの話が本格的になったからね。」
オショーから、ジョーと鉄平たちに、プロボクサーの堂島さんと言う人が、紹介された。
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