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第238話 軟骨ピアス
「すげえ、カッコいいよ。」
「痛そうだ。」
「引っかからないの?」
軟骨ピアスに慣れるといくつか付けたくなる。
まず、2ヶ所、開けたのがヘンドリックスとトラガスだった。ジョイントで繋がっているから、思ったより痛くない。毎日消毒する。
家でキスしながら、
「唇にも入れようかな。」
「ボスに言われたでしょ。だんだん麻痺して来て
たくさん付けたくなるから、しばらくは増やすな、って。」
「そうだった。気を付けよう。」
本来、行政の施設なら、ピアスやタトゥーは禁止事項だ。
オショーはここを解放区にしようと言っていたので禁止されなかった。
あの日からサブは
ジョーに変な遠慮をするようになった。
カフェのお客さんからナンパされることの多いジョーに気を遣ってしまう。
「ジョー、かっこいい。彼女とか、いるの?」
デートのお誘いがあるのを見かける。
休憩時間に、
「さっき誘われてたでしょ。いいよ。
たまには、行ってくれば。」
「何言ってんだよ。俺はサブの方が心配だよ。
よく女の子に話しかけられてるじゃないか。」
「待てよ、この頃おかしいぞ、サブ。」
「今夜ゆっくり話そう。」
絆のピアスも入れたのに、なんだか、不協和音が聞こえる。
夜、ベッドの中で、ジョーに優しく抱かれて話をした。
「ジョーは女の人とセックスした事ないんでしょ。僕はいいよ。誰かお相手がいたら。」
でもその人を好きになったらイヤだ、とサブは思った。
「俺は遊びでそんな事、したくないんだ。
本当に愛してる相手としかしないよ。」
「セックスすると好きになっちゃうかもね。」
サブは自分がジョーを縛っているのではないか、と危惧していた。
心の病気を持っているメンヘラなサブの事を見捨てられないだけなんだ、と自己否定に走る。
あの花園飛鳥のステージを見てからだった。
男なら、誰だってあんな人とセックスしたいだろう。
(僕は綺麗じゃない。)
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