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第239話 初恋
精神科の病院で、初めて見かけた時から心を奪われた。
暴れて拘束されて個室に軟禁状態だったジョーが落ち着いたから、と開放病棟に移った日だった。
ジョーが見たのは、消えてしまいそうな弱々しい少年。もう少年と言える年ではないかもしれないが、そう言いたくなるような線の細い人だった。
(守ってあげたい。)
自分の事もままならない状況で、大それた事を思った。
ジョーの父親も言っていた。
「健常者ではないんだ。健常者の反対は異常者だ。」
大いなる誤解。
(まるで腫れ物を触るように俺を見る親。家より病院は居心地が良かった。)
病院の図書室でその少年と話すようになった。
幸せな時間だった。
大量の薬を処方されて、ひと足先に退院したジョーは、彼のことが忘れられなかった。
懇意の主治医に手紙を託した。
退院したら会いたい、と。
いろんなことがあった。親の厳しい反対もあった。それでも今は、やっと一緒に暮らせるようになったのだ。仕事もある。
「サブこそ、女の人に興味があるんじゃないのか?」
いつも図書室に来る娘がいた。熱い目でサブを見ている。そんな事を思い出す。
そして今に至る。
ジョーがサブの手を離さない。
お昼休憩を午後から1時間と決めている。司書の女性と交代で休憩する。大抵ランチタイムの終わった午後3時ごろ。
海の見える3階のテラスでランチを食べる。
ジョーがスタッフ用に作る特製のお弁当だ。
誰もいないから時々キス。
「美味しい!ジョーのお弁当。」
「サブ、愛してるよ。」
「え?何、急にどうしたの?」
手を繋いで離さないジョーに驚く。
「あ、ここにいた!」
テラスにボスと花園飛鳥が来た。
思わず、立ち上がって最敬礼だ。
「ピアス、インダストリアルにしたのね。
一気に突き立ててカッコいいわ。」
「今日はお休みですか?」
「ううん、夜のレイトショーなの。
終わるのは深夜になるわ。
だから遊びに来ちゃった。」
カジュアルな服装でも素敵だ。この服の下にあの乳房が隠れている。あの刈り込んだ陰毛の間にはピアスが付いたヴァギナが隠れている、と思ってしまった。
ジョーは頭を振った。妄想を振り払いたい。
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