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第242話 ボスの頼み
数日後、ロックバーに山崎さんが来た。ジュネと阿修羅を連れている。
「バトルやるのか、と思ったけど、なんだかちがうね。」
粟生を囲んでジュネと阿修羅が話している。
「ボス、今夜は奥様と一緒じゃないの?」
苦渋に満ちた声でボスは答えた。
「恋人と一夜を過ごしているんだよ。
私はいつもコキュ(寝取られ男)に甘んじている。」
白浜ベースの関係者ではない男とホテルにいると言う。
「ここには迷惑かけたくない。」
「そんなの理解できないよ。迷惑かけないって?
なんで夫じゃダメなの⁈」
五月雨と一緒に来ていた琥珀が抗議する。
この所、ボスと花園飛鳥の話題で持ちきりで、事情を知らない人はいない勢いだった。
「もう、恥でもない、嫉妬でもない。
病気なんだからね。」
飛鳥はいつも違う男とセックスをしたくなるそうだった。
「だっていつもときめいていたいのよ。
わくわくしていたいの。」
男とホテルに行く時は、怪我しないようにボスがピアスを一つ一つ外してあげるそうだ。
ヴァギナに付けた小さなリングも外して、飛鳥が痛い思いをしないように。
後腐れのない男を厳選して金で買う。何事も金で解決するのがボスのやり方だった。
人払いを咲耶さんに頼むと、五月雨にボスは言った。
「今日はメイ先生に頼みがあって来たんだ。
メイ先生、飛鳥を抱いてくれないか?」
それを聞いてオショーが怒った。
「義理とはいえ、五月雨は私の息子だ。
不倫させろ、と言うのか。私を怒らせないでくれ!」
「失礼は承知の上だ。
飛鳥がおかしくなった。メイ先生に会った時からだ。発狂しそうだ。助けてやってくれ。
頼む,頼む、一回でいいと言っている。」
五月雨は無表情だ。琥珀は真っ青になっている。
「昔なら、男の甲斐性とか、据え膳とか言ったものですが、今の時代、拒否する権利もありましょう。本人が断ると言うのなら仕方ないですわ。」
般若の形相で玉梓が言った。こんな顔を見たのは初めてだ。オショーは、たじろいだ。
言いたいことは山ほどあるが、正論を並べても解決の方法が見つからなかった。
「イヤだ!絶対イヤだ!」
琥珀が叫んだ。
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