248 / 256

第248話 琥珀と五月雨

 例の一件以来、琥珀は五月雨に抱かれるのが自分の浅ましさに感じる。 「メイ先生、俺思い出すといたたまれなくなるんだ。」 五月雨が恐れていたのもその事だった。飛鳥のためにとんだ荒療治だった。   琥珀は人に見せて興奮するようなのが恥だと思っている。  事前の相談もなく、五月雨の独断で実行された事に傷ついている。 「僕が謝るべきなんだ。琥珀を愛している事をひけらかした結果になったね。悪かった。」  優しく抱き寄せる五月雨に素直になれない。 「メイ先生が大好きなのに、なんだか、イヤな気持ちがついてまわる。  メイと愛し合うのがみっともない事のように感じるんだ。」 思わず,抱き寄せる肩に力が入る。 「琥珀は綺麗だよ。いつも。 みっともないなんて。」 そんな気持ちにさせた事に愕然とする。  確かにゲイのセックスは美しくないだろう。 入れるべきじゃない所に無理矢理挿入するのだ。 身体の構造にも無理がある。  人に見られるのは抵抗があっただろう。 「俺は綺麗じゃない。醜い姿をさらしてしまったんだ。考えただけで自分が嫌になる。 メイ先生はあんな事が好きなの?」  琥珀は、どんな時もかっこいい、美しいこの男が、ずるい、と思った。  強い力で身体を開かれて感じている自分は醜い、と思ったのだ。  今でも思い出すと死にたくなる。 (あんな事が俺は好きなんだ。 気持ちよくなってしまうんだ。 恥ずかしい人間なんだ。)  この前の、ボスと花園飛鳥の前で性行為を見せた事が、実に恥ずべき事に思える。  誰にも見せない、二人だけの秘密なら 気持ちよさを恥じることはなかった。  今は自分が浅ましい動物に成り下がったと思うのだ。  五月雨は、琥珀に触れる事ができない。壊してしまいそうで。身体も、心も。  ベッドの端で背中を向けて眠る。これ以上端に寄れないくらい、全身で拒絶している。  優しいくちづけも顔を背けてしまう琥珀。 「琥珀、僕を嫌いになったの?」 「違うよ。メイ先生は大好きだよ。」 (でも、触れたくないんだ。) 「琥珀,もっとこっちにおいで。 ベッドから落ちるよ。」 パッと起き上がって涙を溜めた瞳で言う。 「俺、もう帰る家もないんだ。」 五月雨の所に行くと言った時、母親に 「ゲイなんて、縁を切る。」 と言われたのだった。

ともだちにシェアしよう!