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第250話 聡とタカヨシ
聡の古着屋は少しずつ認知度も上がり、この界隈だけでなく遠くからもお客さんが来るようになった。
もともと九十九里には、何も面白そうなところが無かったから、白浜ベースが出来て喜んでいる若者が多い。デートコースにもなるようだ。
キッチンカーだけでなく、何か食べ物屋さんも数軒出来ている。雰囲気のあるカフェとか、美味しいカレー屋さんとか、メキシコ料理の店。
もちろんイムランのケバブ屋は白浜ベースの顔になっていた。
聡が店の入り口を掃除していると、向こうからカッコいい男が歩いて来た。
(もう、ひとりで歩いて来ないでよ。
素敵すぎるよ。)
長い髪を片手でかきあげて背の高い身体を折り曲げるようにそばに来た。
「タカ、一人で歩いて来たの?源八は?」
「海岸に車を停めてトンネルを抜けて来た。
源八は海岸でディーキー(粟生の犬)と走り回ってるよ。」
いつも外でタカヨシに会うとドキドキしてしまう。
タカヨシはこう見えて、中々気が強い。
ラップでケンカを売られても一歩も引かない。
聡はそんなタカヨシを見るたびに好きになる。
一緒に暮らしたい。そんな夢のような事を考える。
頭をゴシゴシ乱暴に撫でて来る、その大きな手も好きだ。
「聡はいい子にしてたか?」
「は?何言ってんの。」
もう嬉しくて何も考えられない。
「似合ってんな、極太ピアス。」
「重くて穴が伸びてるよ。」
「じゃあ、輪っかのピアスに替えるか。」
「いいよ、タカとおそろいで。」
「おそろい、いいな。タトゥーは落ち着いたか?」
二人で漢字を一文字、太ももに入れていた。
聡は「信」の字、タカヨシは、そのまんま「聡」の一文字だ。「信」は源八の玉の文字。
「タカは浮気出来ないね。
泳ぎに行ったってバレちゃうよ。オレの名前。」
「いいんだよ。
聡命(さとしいのち)でもよかったんだ。」
思わず見つめ合ってしまった。
たまに下○沢のミカドが手伝いに来てくれる。
新しい箱が入荷すると、ここに届くから、仕分けをして商品の価値を教えてくれる。
ミカドの目は確かだ。
ここに来る時は、亮の痛車で来る。
「こんなにしちゃってBMWがもったいねぇ。」
と、言われても気にしない。
亮はいつでも自信たっぷりだ。
「なんかいい服入ったか?」
亮もいつ見ても感心するほどイケメンだ。
「何見てんだよ。」
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