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第253話 ケノ

 五月雨が酒に溺れていると、みんなが心配していた。玉梓は 「そんな弱い人間じゃないでしょう。」 そう言って静観していた。  神社で犬のケノはシノと一緒にオショーが世話をしていたが、どこか寂しそうだった。 「ケノを置いて行くなんて。」 琥珀はどんな覚悟をしたのだろう。  それでも白浜ベースに、時間は流れる。 聡とタカヨシは、家を借りて二人で住むようになった。  古着屋のホームページに、モデルとしてタカヨシが登場すると、たちまち話題になった。  タカヨシを一目見ようとお客さんが増えた。 増えたなんてもんじゃない。行列が出来ている。  ファッション雑誌に載って、推しファンがすごい事になっている。  聡はマネージャーもどきの仕事で忙しい。 タカヨシは店でも平気で聡を抱き寄せる。  人目があってもキスしてくる。雑誌の記者が 「二人は恋人同士なんですか?」 と聞くと 「そう、一緒に暮らしています。 俺たちゲイカップル。愛し合っているんだ。」  アメリカあたりのゲイファッションのコーディネートが流行り始めた。  タカヨシがラッパーだと噂を聞きつけて、ラップバトルをやろう、との声が上がる。   古着が飛ぶように売れている。 女の子たちが観光がてら集まって来る。 「イケメンだらけなのよ。白浜ベースは!」  ストリートの空気に染まってカッコいい奴等が集まって来る。 「すげえ!女の子たちに追いかけられた!」 息を切らして店に飛び込んで来たのは、亮とミカドだった。  古着屋を自分たちの溜まり場にしている下○沢の連中もカッコいいと評判だった。 「妖博覧会」はいつも盛況で、駄菓子が子供たちに人気だった。ジャンボちゃんが独自のくじ、を作って怪獣のソフビ人形なんかが当たるのでみんな夢中だ。  図書館カフェのジョーも人気でサブが時々,へそを曲げる。 「可愛い女の子はみんな僕の敵だ!」 サブも女の子に人気があるのに。

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