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第6話 

誰かに抱きしめられているかのような苦しい感覚で意識が浮上する。薄く瞼を開ける。ライトの光がゆらゆらと揺れているのが視界の隅に映った。視線をゆっくりと左右に動かして現状を確認する。どうやら僕は横になっているみたいだった。暖かな布団の感触が素肌に触れる。触り心地のいい布の生地に身体の力を抜いた。 「あっ、起きた?おはよー。優くん」 ひょっこりと僕の視界に現れたのはお兄様だ。僕を抱きしてめていたのはお兄様だった。お兄様は横になっている僕を更に強くと抱きしめると首筋に鼻を埋めて大きく息を吸ったり吐いたりしている。いつも通りのお兄様の姿に僕もいつも通り、腕を上げて、兄の髪に指先を通した。そして、髪を梳くように優しく撫でる。ピリッとした痛みを首筋に感じた。次いで、皮膚を吸われる。何回か繰り返していると唇が離された。 「紅い花が咲いたよ」 お兄様は吸い付いていた場所を撫でてうっとりと笑った。お兄様が僕の身体を離す。離れた暖かな体温に身体が急速に冷えていく。お兄様は数歩後ろに下がると、音を立てて何かの準備を始めた。僕は腕で上半身を支えるように起き上がる。お兄様は鼻歌を歌いながら楽しそうに準備をしていた。数分たってお兄様が片手に何かを持ちながらこちらへと歩いてくる。片手に何を持っているのかは暗くてよく見えなかった。 お兄様は持っていたものを床に置くと、何かはカタンと金属特有の高い音を出す。ライトに照らされた何かは金属製のバケツだった。そのバケツを見てブルっと身体が振るえる。お兄様はその中に入っていた見覚えのある品々を床に並べていく。

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