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番外【R18】鬼神の本能

 体が熱い。何かが腹の奥から、せり上がってくる。  高揚と危機が同時に胸の中に膨れ上がる。 「ぁ……、ぅんっ、はぁ……、ぁ……」  聞き慣れた喘ぎ声が小さく響く。  ゆっくり目を開けると、狭い視界に直桜がいた。  体を繋げたまま護の上に乗って、蕩けた顔をしている。  直桜の顔が護に近付き、唇を貪った。 「もっと、食べて、護……、おれの神力と、直日を、たべてぇ……」  普段より何倍も甘えた声が、護に懇願する。 (食べる? 神力と、直日? どういう意味だ?)  頭では不思議に思うのに、体はその声を受け入れていた。 「沢山、食べてあげましょうね、直桜。俺に、総てを差し出して」  直桜の顎に手をかけて顔を上向かせると、唇を食む。  重なった口を吸い上げると、濃い神力が護の中に流れ込んだ。 (美味い……、直桜の神力は、格別に、美味いな……)  体の中に流れ込んでくる神力を味わう。  美味いと感じるほどに、疑問と不安が掻き消えて、食う衝動に支配される。  腰をくいと動かせば、繋がった直桜の下の口が締まって、護の上に乗った体がびくびくと震えた。  直桜が感じるほどに、流れ込んでくる神力が美味くなる。  もっと味わいたくて、護は強く腰を押し付けた。 「ぁ! 気持ちぃ……、護、もっと、シてぇ、もっと、食べてェ」  直桜が自分から腰を動かす。  欲情に応えて、護も腰を突き上げた。  護の腹の上に、直桜の白濁が飛び散った。 「もっと、気持ち悦くなって、全部、寄越して。直日神を俺に、喰わせて。今より善くしてあげるから」  口が勝手に言葉を発する。  その言葉に、違和すら感じない。  直桜が顔を上げて、笑んだ。 「あげるから、もっとぉ……、んぅ、ぁ、護が、ほしぃよぉ……」  蕩ける直桜の啼き顔が、いつも以上に可愛い。  たまらなくて、もっと虐めてしまいたくなる。  唇を押し当てて、神力を一際強く吸い上げた。 「足りない、直桜、もっと、俺に全部、曝け出して」  直桜が何かを開いた感覚があった。  ぼんやり光った胸の奥から、光が上がってくる。  それが護の口の中にやってきた。  手の上に吐き出すと、|金色《こんじき》の|玉《ぎょく》だった。 「これが、直日神……。神を喰えば、直桜は本当に俺のモノだ」  それがやけに嬉しく感じられて、護は金色の玉を頬張り、飲み込んだ。  体中に快感が走り、充足感で満たされる。 「美味い……っ。直日神は、こんなにも美味いのか。あぁ……、堪らない」  自分の中に入り込んできた神力と神が護の気持ちを昂らせた。 「直桜、直桜は誰のものですか? 誰の言葉に従う?」  直桜の顎を指で撫でる。  ぼんやりした目が護を弱く捉えた。 「俺は、護の……、全部、護に、言われた通りに、する。護の言葉に、従う。俺も、直日も護が、守ってくれる、から……」  直桜が嬉しそうに護の肌を舐め上げる。  腰を少し揺らしてやると、嬉しそうに快楽に酔って嬌声をあげる。  愛おしくて仕方がない。 (これでやっと直桜は俺のモノだ。俺だけのモノになった。嬉しい。堪らなく、愛おしい)  直桜の体を引き上げて、その首元を食む。  震える体も感じる声も、直桜の総てを自分が支配している。  そんな全能感が全身を駆け巡る。  直桜を独占する愛情だけが、護を突き動かした。 「直桜の神力も神様も、俺が抱えて守るから。直桜はずっと俺だけのモノだ」  そう呟いて腰を激しく振り動かす。 「ぁ……、ぁっ! 護、気持ちぃ、好き、大好きだよ……ぁん、ぁぁ! 護だけが、俺の、全部……、ぁん、ぁぁあ!」  啼いて悦び護に縋りつく直桜が、只々、愛おしい。  直桜の男根から、また精液が吹き出した。  それを満足した心持で眺めながら、護は自分の総てを直桜の中に吐き出した。 「そう、それでいいよ、直桜。直桜は、俺の直桜だ……、俺だけ見て、感じていれば、いい……。誰にも、渡さない、俺の、神様……」  視界がぼやけて、狭くなる。  意識が深くに沈んでいく。   目の前は真っ暗で、また何もわからなくなった。 〇●〇●〇 「ん……」  窓から差し込む日の光に気が付いて目を開くと、いつの間にか朝だった。  隣には直桜が寝ている。 (昨日は、そうだ。一緒に寝たんだ。訓練中だけど、俺が誘ったんだった)  二週間の訓練の間は禁欲生活をするつもりが、思いっきり直桜を誘ってしまった。  護のお願いを直桜が断るはずもなく、昨日は護の部屋で共に眠った。 「なのに、お互い寝堕ちてしまいましたね」  抱き合っているうちに温かさに眠気が勝って、何もせずに眠ってしまった。  筈なのだが。  何故か不思議と、抱き合った後の満足感で満たされている。 「シたん、だっけ?」  二人とも、衣服が乱れている様子がない。  繋がった後は疲れて、裸で寝堕ちる時が多いのだが。 「何か、あったような気がするのに……」    何も思い出せない。  突然目の前に、直日神の顔が現れた。 「目が覚めたか、護」 「直日神……、直桜はまだ寝ているのに、珍しいですね」  護に腕枕されている直桜はまだ寝息を立てている。  直桜の意識がないときに直日神が顕現するのは滅多にない。 「直桜は疲れておるだろうから、起こさぬでよい」 「ええ、まぁ、そうですね」  八瀬童子の温泉とサウナで癒された後、一番元気だったのは直桜なのだが。  それでもきっと溜まった疲れはあるだろう。  訓練もそれなりに疲れはする。 「目が覚めれば気が満ちていようし、普段より神力の巡りも良かろう」 「そう、なんですか?」  直日神がニコリと笑んだ。 「護は、直桜以外の惟神と性交したいか?」  突然の問いかけの意味が解らずに、呆けてしまった。 「性交とは、体を繋げる、性交、ですか?」  直日神が頷く。 「直桜以外としたいとは思いません」  普段から直桜と護を見守ってくれている直日神らしからぬ質問だと思った。  神紋で繋がっている以上、護の想いは感じ取っているはずだ。 「そうだな。それでこそ、吾が見込んだ護だ」  直日神の指が顎に掛かる。軽く顔を上向かされた。 「護の腹の中は気持ちが良かったぞ。護であれば多少の無体は許そう」  直日神の顔が近付いて、護の唇に神の唇が触れた。 「えっ? 何を……。さっきから、何の話をしているのですか?」  今朝の直日神は変だ。  仕草も話も、いつもと違う。  同じなのは表情だけだ。 「護は護のままでおれば良い、という話だ。可愛い、吾の護」  護の後ろに寝そべると、直日神が護を背中から抱き締めた。  すぐに寝息を立て始めた。 「そのままで、寝ちゃうんですか?」  腕に直桜を抱いて、背中から直日神に抱き締められる状態になった。  温かくて、また眠気が襲ってきた。 (朝ごはん、作らないと。けどまだ、目覚ましが鳴るまで時間があるかな。もう少し、このまま……)  あまりの心地のよさに、護の意識はまた眠りに落ちていった。

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