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第2話
「おいおいおい、なんなんだ?一体」
警察署で調書取りを受けた3人は、それぞれの保護者に連絡が行き、悠馬には当たり前だが時臣が迎えにきた。
「悠馬 、夏と貴一とドライブに行くって言うから車貸したんだぞ。心霊スポットってなんだよ。しかもこんな夜中に呼び出しやがって」
その時点での時間は午前2時28分。
警察に呼ばれて泡を喰ったのか、時臣は一応シャツを着て夏物のブレザーを羽織ってはいたが、髪は頑張って整えた感丸出しだし、無精髭もそのままだ。しかし
相変わらず胸板は大きくシャツはパツパツ。
コンビニ前で連絡した後、通報でやってきた警官と共にもう一度屋敷に戻った3人は、警官が『それ』を確認するのにも立ち会わされ、それが人の亡骸だとはっきりと確認した時には背筋を凍らせたものだ。
それから警察署から私服の刑事や鑑識がわらわらとやってきて、ドラマみたいだ…などと呑気に鑑識さんのお仕事とかの一連を眺めた後、第一発見者という重要参考人として、地元の警察署へと連れて来られたのだった。
悠馬と他2人はごめんなさい、と呟いて時臣の前で軽く頭を下げた。
夏と貴一は地方から来ているため、親御さんが今すぐ来るのは無理と言うことで時臣がまとめて連れて帰るという話になった。
悠馬がよく家に連れてくるものだから、顔馴染みでもあるし時臣は一応親御さんとも話をし挨拶は済ませた。
「篠田久しぶりだな」
そんな折、時臣に声をかけたきたのは少々小太りの少年課の金井だ。
少し薄くなったのを気にしたように頭のてっぺんを撫でながらやってくる。
「あれ?金井さん!今はこちらなんですか?そして少年課?なんだ〜警視庁 の捜査一課で終わると思ってたけど」
探偵業はヤクザとも知り合うが、警察とも結構懇意になるものだ。
金井は警視庁の捜査一課叩き上げの刑事だった。
時臣の仕事も時々お世話になったりして、世話焼きの金井とは一時期会うことが多かったが、叩き上げの刑事ももう定年間近で、それは時臣もいろんな筋から聞いていた。
「なんだ、俺の定年知ってたのか。俺もそのつもりだったんだがな、定年間近になって、俺の捜査のやり方だと無事に終われなそうだと言われて優しい所轄の少年課に移されちまった。まあ地元だしな」
優しい顔でそう言って笑ったが、この人が捜一で昇級もせずに現場で働いているのを見てきた時臣は金井の寂しさも感じ取っていた。
「ま、それが正解ってこともあるし。定年したら一緒に飲みましょうよ」
「そうだな、警官であるうちは怪しいお前とはつるめないからな」
「やだな、俺善良な市民なのに〜」
そう言って笑い合って、ーじゃあ子供達頼むよーと去って行く。
そう言われて和やかな顔をしていた時臣は、一呼吸おいて呆れた顔で3人を見た。
「しかし、遺体発見とは随分大層なことやらかしたなあ。今日のところは帰っていいらしいけど、何回か|警察署《ここ》に通うことになると思うから、それは覚悟しとけよ」
3人は神妙な顔で頷く。
「大体心スポなんて行って呪われたらどうすんだ?あんなとこ行くもんじゃないぞ。2度とやるなよ」
なんだかちょっと含みのある言葉に3人は一瞬ーん?ーとは思ったが、ただでさえでかいおじさんにそう言われ、その場はーはいーというしかなかった。
「まあ今日は俺んとこ泊まってけ。こんな目に遭ったら一人暮らしの部屋に帰るの嫌だろ」
一転優しく夏と貴一にそう言って、時臣は先頭に立ち、行くぞと部屋を出て行った。
「おじさんでよかったよ…親だったらこっぴどく怒られるところだったわ」
悠馬が時臣に続きながらそう言うと、貴一が
「確かに遺体見た後に1人の部屋は…いやだよな。お前のおじさんいいひとだな」
夏もそれに同調した。
都内とはいえ、世田谷からは少し離れた場所だっただけに片道だけで1時間弱かかり、仕事用の車できた時臣の後に悠馬が時臣個人の車を運転し、なんとか家に辿りついたのは、朝の4時頃だ。
悠馬たちを風呂に入れたり色々やってるうちに、3人が寝付いたのは結局朝の5時。
時臣は呼び出されるまで寝ていたし、返って目が覚めてしまったと仕事の書類を眺めている。
そこには今手掛けている、相変わらず多い人探しのうちの一件の依頼書。
半月ほど前に家族から依頼があった一件だ。
近藤智史 36歳男性。リフォーム会社の営業。その会社の所在地は、今回の事件の洋館が建つ国上市だ。
会社への聞き込みで入手した情報は身長175cm体重68kg 髪の色は黒の短髪 人当たりは営業だけあって悪くはない。
同僚の話だと少しギャンブルが好きだという。その少しは人によるので、その線を攻めるのもいいかもしれない。
などと色々考えながらみていたが、今日起こった遺体発見も時臣は視野に入れていた。
行方不明になって半月。そろそろご遺体関係も射程内に入る頃だなとは踏んでいたから、手がかりは多い方がいいし遺体本人が近藤ではないと判れば、違ったねでまた他の調査をするだけだ。
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