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第11話
煜瑾が申家に贈るためのミモザのクリスマスリースを注文しに、お花屋さんへ行くと、玄紀は母が好きな蘭を注文し、小敏は文維の母で自身の叔母である恭安楽へと、クリスマスらしいポインセチアを注文した。
「ズルくないですか、2人とも」
自分に便乗するように、さっさとプレゼントを決めていく小敏と玄紀に、煜瑾はちょっと拗ねる。
「ええっと、煜瑾は、後はお兄さまと~、文維のところの叔父さまと叔母さまへのプレゼントだっけ」
誤魔化すように小敏が言うと、煜瑾もプッと吹き出してしまった。
「唐家の煜瓔お兄さまへのプレゼントこそ難しいですよ。欲しいものなら何でもご自分でお買いになれるんだし…」
「何言ってるんだよ、玄紀。煜瓔お兄さまこそ楽勝だよ。煜瓔お兄さまなら、煜瑾が使い古しの靴下をプレゼントしたって泣いて喜ばれるよ」
「私は、お兄さまにそんな失礼なプレゼントは贈りませんよ」
3人は、ワイワイと言いながら、とあるヨーロッパハイブランドの店にやってきた。
「お兄さまは、こちらのブランドの小物をよく使われているので…」
「煜瑾坊ちゃま?」
親友たちに説明をしていた煜瑾を、店内にいた先客が声を掛けた。
「え?茅 執事?」
煜瑾も驚いて足を止めた。
「ああ、皆さまもお揃いで。羽小敏さま、申家の坊ちゃま、こんにちは」
茅執事は、大切な煜瑾の友人として相応しくないと思っている小敏が一緒だったことに不満を覚えるが、名門唐家の有能な執事の矜持として、そんな事は一切顔には出さない。
「煜瑾坊ちゃまは、煜瓔お兄さまへのクリスマスプレゼントをお探しですか?」
なぜか、茅執事は少し声を潜めて言った。
「ええ、そうですが?」
「ならば、今はお避けになって下さい。旦那様が、今、奥でジャケットの試着をされておられます」
「!」
煜瑾は驚いて声も出なかったが、すぐに理解して大きく頷いた。
「坊ちゃま。もしよろしければ、旦那様へのプレゼントのお買い物は、日を改めて私がお供いたします」
「ありがとう、茅さん」
煜瑾は小声でそう言うと、兄に見つからないうちに、急いで親友たちと共にショップを後にした。
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