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第12話
結局、煜瑾は玄紀の両親へのプレゼントを買っただけで、この日は諦めた。
「唐家へのプレゼントは、近々茅執事にお手伝いしてもらいます。包家のお義母 さま、お義父 さまのプレゼントは、文維に相談します。小敏と玄紀のプレゼントも買わないといけないし」
そう言って煜瑾が疲れたように微笑むと、小敏と玄紀も納得した様子で頷き、今日の所は玄紀の運転するBMWでそれぞれの自宅へ送ってもらうことにした。
***
その夜、クリニックから帰った文維に、煜瑾は今日のことを楽しそうに話した。
「玄紀の家族が、これをきっかけに仲良くなってくれたら嬉しいのですけれど…」
無邪気で、清純な煜瑾は楽観的にそんなことを言うが、カウンセラーでもある文維は、そんな風に単純には考えられなかった。
玄紀がまだ母を恋しがるような幼少期であればともかく、この歳になって、理想的な仲良し家族という訳にもいかないと思う。だが、ほんの少し、家族が歩み寄ることで、これまではほとんど無かったという家族3人での食事などが出来るようになるかもしれない。
「玄紀が、幸せになりますように…」
煜瑾はそう口にして、ハッと気づいた。
「クリスマスツリーを飾りましょう!」
「え?」
唐突な思い付きに文維は驚いた。自宅にクリスマスツリーを飾るなど、小学生以来だ。カワイイ物好きの母が飾りそうなものだが、実はこの時季はいつもパーティーへの招待や、新年、春節の準備などで忙しく、喜びもしない息子のために、細々したものを出したり、片付けたりするのを煩わしく思っていたらしい。
「その出窓の所に置けるような、小さな、可愛らしいツリーにしましょう。私が大好きなみんなが幸せになるように、気持ちを込めて、綺麗に飾り付けます」
煜瑾の清らかで素直で優しい気持ちが、クールと言われる文維の胸を温かくした。
「じゃあ、明日の夜、一緒に買いに行きましょう。隣接した嘉里中心 のモールか、そこで見つからなければ、すぐ先の久光 デパートまで足を延ばしてもいい。そのまま、外で食事をしましょう」
煜瑾は嬉しそうに頷きながらも、すぐにちょっと寂しい表情を浮かべた。
「クリスマスまで、あと10日ほどしかないのですね」
煜瑾は、もっと早くにツリーを飾ることを思いつけばよかったと後悔しているようだった。
そんな純真な煜瑾を慰めようと、文維は恋人の肩を抱き寄せ、母が贈ったアドベントカレンダーの前へ立った。
「さあ、今日の引き出しを開けてみて下さい」
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