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第13話
アドベントカレンダーになっている引き出しをそっと開けると、そこには小さなマカロンが入っていた。クリスマスらしい赤いマカロンだ。
「あ、見て下さい、文維!中のクリームが緑で、赤と緑のクリスマスカラーのマカロンですよ」
はしゃぐ煜瑾を愛おし気に見つめ、文維はマカロンを勧めた。
一瞬、恥ずかしそうに文維を見た煜瑾だったが、そっと取り出したクリスマスカラーのマカロンを口に入れる。
小さなマカロンが口の中で溶けて消えるのを惜しむかのように、煜瑾はゆっくりとマカロンを頬張った。
「ん~。赤いのはクランベリーのようです。間に挟んだクリームはピスタチオクリームでした。甘酸っぱさと、濃厚な香ばしさが贅沢な味わいで、とっても美味しいです」
満足そうな煜瑾に、文維は当然のように頬に手を添えて自分の方を向かせ、そのまま唇を奪ってしまう。
「ん…。もう…」
不服そうにしながらも、どこか煜瑾は嬉しそうだ。
毎日、文維が帰宅すると2人でこうしてアドベントカレンダーの引き出しを1つ開ける。そして煜瑾は中の手作りスイーツを味わい、文維はその甘くなった煜瑾の唇を味わうというのが、今年の2人のアドベント期間の習慣になってしまっていた。
「今日も、美味しいですね」
口付けの後、文維はペロリと自分の唇を舐めた。なんでもない仕草であるのに、堪らなく性感的に見えて、煜瑾はドキドキしてしまう。
「ここまで、毎日1つとして同じお菓子はありませんでした。同じひと口サイズのパウンドケーキでも、レーズンの時と、クルミの時がありました。お義母さまは、1つ1つ私のために作って下さったのです。きっとかなり前から…」
そう言って、煜瑾は感謝の気持ちをいっぱいに表した、典雅な笑みを浮かべた。
その美しさに魅了されながら、文維は微笑み煜瑾の肩を抱いた。
「本当に煜瑾はイイ子ですね。そんな煜瑾を喜ばせるためなら、みんな努力を惜しみませんよ」
幸せそうに最愛の人の言葉に聞き入っていた煜瑾だが、ふと顔を上げて恋人の目をまじまじと見て言った。
「文維は、私のために…どんな努力をしてくれるのですか?」
それだけ言うと、真っ赤になった煜瑾は文維の胸に顔を埋める。
「それは今夜、ベッドの中で教えてあげますよ」
そう言って文維は煜瑾を抱え直し、もう一度甘い唇を味わった。
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