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第26話

 煜瑾と小敏は、タクシーで包家へ向かった。  各国の大使館も多く、私立学校もある文教地区の上級公務員用の高級アパートに、包家はある。アパートと言っても、日本のそれとは違い、間取りは日本のマンション以上の広さだ。 「煜瑾ちゃん!小敏!メリークリスマス!」  煜瑾と小敏が玄関を入ると、さっそく包夫人が飛び出してきて、お気に入りの2人を交互にギュッと抱き締めた。 「叔母さま、メリークリスマス。ボクからのプレゼントはもう届いてる?」 「ええ、ポインセチアは昨日のうちに届いたわ。リビングに飾ってあるので見てちょうだい」  しばらく小敏と義母のやり取りを大人しく見ていた煜瑾だが、恭安楽が優しい笑顔で振り返ると、嬉しそうに笑顔を返した。 「煜瑾ちゃんも、今日はわざわざ来てくれてありがとう」 「いいえ。私こそご招待いただいて、ありがとうございます。それに、お義母さまには早くお会いして、アドベントカレンダーのお礼が言いたかったのです。ステキなカレンダーに、本当に素晴らしいお菓子をありがとうございました」  素直で純真な煜瑾が心から感謝を述べると、恭安楽も胸が熱くなった。 「煜瑾ちゃんにこんなに喜んでもらえて、私こそ本当に嬉しいの」  2人はもう一度仲良くギュッとハグをすると、そのまま手を繋いで奥のリビングへ向かった。  広々としたリビングには本革の大きなソファがあり、文維の父である包氏はそこでテレビを観ていた。 「お義父さま、ごきげんよう」  上品な煜瑾が挨拶をすると、文維と同じく長身瘦躯の理知的な紳士が立ち上がる。丸顔の温厚そうな包伯言は笑顔で煜瑾を迎えた。 「ようこそ、煜瑾。久しぶりに来てくれたね。なかなか会えなくて、私も安楽も寂しい思いをいていたよ」  そんな包氏を見て、煜瑾は思った。文維は母親似の美形だと評判だが、このスタイルの良さや、声の甘さなど、やはり父である包氏から受け継いでいる。  そんなことを考えながら煜瑾がペコリと頭を下げた。 「ゴメンなさい、お義父さま。私も、寂しかったです」  可愛い煜瑾がそう言うと、包氏は我が子のように手を繋ぐ自分の妻と共に、ソファに座らせた。 「今、飲み物を用意しよう」 「叔父さま、飲物ならボクが」「お義父さま、私が」「私が支度をするわ」  包氏の申し出を、3人は慌てて引き受けようとして、お互いに顔を見合わせて笑った。 「じゃあ、みんなで用意をして文維が来るまで楽しく過ごそうよ」  小敏の一言で場は収まり、小敏と包夫人はキッチンへ飲物と、もちろん包夫人手作りのお菓子を取りに行った。 「煜瑾。君はまだ、これを見たことがないだろう」  文維の父がそう言って煜瑾を引き留めた。持ち出したのは、包家のアルバムだった。  包夫妻の結婚式の写真から始まり、妊婦姿の恭安楽、小さな赤ん坊を抱く包氏の写真が並んでいる。 「この赤ちゃんが文維なのですね」  煜瑾は感動して、その大きく澄んだ美しい黒瞳をキラキラさせた。 「これが、文維と…、生まれたばかりの小敏だ」 「わあ~。こんなに小さいのに、もうすっかり『文維』ですね。小敏もカワイイ~」 「え~、何なに~?」  楽しそうな叔父と親友に、小敏が飲物を持って割り込んできた。その後には包夫人もお菓子を持って続き、寄り添うように夫の隣に座った。  いつまでも愛し合い、仲の良い包夫妻は煜瑾の理想の両親だった。その2人が目の前で睦まじい様子に嬉しくなる。 「さあ、煜瑾ちゃん。アドベントカレンダーに入れたのとは違って、今日は大きなお菓子を用意したから、お好きなだけ召し上がれ」 「ありがとうございます」  4人は、この上なく温かな家族として、美味しいものを食べながら楽しい団欒を続けた。

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