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第27話
午後からはクリニックを終えた文維が合流し、包夫妻のもてなしを存分に堪能した。
そして、それぞれにプレゼントの交換をした。
「まあ、嬉しい!」「ありがとう」
文維と煜瑾からだとした、夫とお揃いのタブレットと紺と赤の色違いのカバーに、包夫人は大喜びだった。物静かな包教授も、嬉しそうに微笑んでいる。
そんな包夫人からは、それぞれ手編みの、小敏には赤のニット帽を、煜瑾にはオフホワイトのマフラーを、そして文維にはマフラーではなく輪になったキレイな青のネックウォーマーが贈られた。
「文維は昔からマフラーをすぐに失くしてしまうのよ」
そんな風に不満そうに言う恭安楽の目は、裏腹に慈愛に満ちた母親のものだった。
「私は彼女ほど器用じゃないし、煜瑾のお兄様のように裕福ではないからね。期待しないでおくれよ」
包氏は冗談めかしてそう言って、現金が入った紅包 (ご祝儀袋)を3人の子供たちに渡した。
3人はお礼を述べて、包氏のためにクリスマス用の発泡ワインで献杯した。
それからは大いに食べ、大いに飲み、そして大いに笑った。こんなに楽しいクリスマスは初めてかもしれない、と煜瑾は思った。
「文維、ハッピーバースデイ!」
小敏の声掛けで、5人は改めて乾杯した。それから包夫人ご自慢のお誕生日ケーキが運び込まれた。それは甘さを控えめにした、軽いシフォンケーキで、たとえひと口でも甘い物が苦手な文維が食べられるよう工夫されたものだった。
「文維、お誕生日おめでとうございます。これは…、私からのプレゼントです」
控えめな煜瑾が取り出したのは、誰しもが見覚えのある上品で明るい空色のギフトバッグだった。
「わあ、ティファニーのアクセ?オシャレだな~」
小敏が言い当てると、煜瑾は恥ずかしそうに俯いてしまう。
「文維は、ニューヨークに留学していたから、アメリカのブランドにしたいなって思ったのです…」
元々煜瑾はティファニーブルーが好きだったのだが、その色が文維に似合う、と思った時から煜瑾に取ってその色は特別なものになった。
「ねえ、開けて見せて」
母の願いに文維は嬉しそうに微笑み、煜瑾と一瞬目を合わせ、包装を解いた。
「シルバーチェーンのネックレスだ~」
「キレイね~」
小敏と恭安楽は、文維が手にした繊細で気品を感じさせるネックレスを、ウットリと眺めた。
「ありがとう、煜瑾。とても素敵なネックレスですね。とても気に入ったので、今から着けてもいいですか?」
文維がはにかむ煜瑾の顔を覗き込むようにして訊ねると、煜瑾はホッとしたように顔を上げた。
「もちろんです、文維!私が着けてあげますね」
サッと立ち上がると煜瑾は文維からネックレスを受け取り、仕事用のネクタイをすでに外していた文維は、カッターシャツを第2ボタンまで外した。煜瑾がソファーに座る文維の後ろに回り込み、自分で選んだプレゼントを首に掛けた。
「どうですか?」
振り返った文維に、煜瑾は満面の笑みで答えた。
「とっても似合っています!」
胸元を深く開けた肌の上で直接輝くセンスの良いシルバーのネックレスはどこかセクシーで、煜瑾はまたも頬を染めて俯いた。
そんな煜瑾を文維は引き寄せ、家族の目の前でありながら強く抱きしめ、愛し気に口付けた。
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