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第3話
神主さんからルートや注意事項などの説明を受け、昼食に大盛り焼き肉弁当を食べた後は、お着替えタイム。
一人一人にふんどしと鉢巻を渡される。どっちも白くて長い布だけど、幅も長さもある方がふんどしだ。
「一度、楽だろうからってパンツタイプのふんどしになったけど、締めつけ具合に個人差があって、緩いと肛門の周辺が擦れて痛いから、このふんどしに戻ったんだ」
兄ちゃんは説明しながらTシャツを脱ぎ、ジーンズを脱いでパンツも脱ぐ。まるで、今から風呂に入るみたいに。
見れば、まわりの人たちも全裸になって、股間に布を当てている。兄ちゃんも、手慣れた様子でふんどしを締める。
逆に、いつまでも服を着たままの俺の方が恥ずかしい。俺も急いでパンツ一枚になった。けど、パンツを脱ぐ勇気が出ない。
「郁真、パンツ脱げ」
「あ、あの…」
「パンツの上から、ふんどし締める気か?」
恥ずかしいけど、全裸になる。昔は兄ちゃんと風呂に入ってたから、見るのも見られるのも大丈夫…。兄ちゃん、前に見たときは毛深かったけど、今見たら毛が短かった。ふんどしからはみ出さないようにカットしたんだな――って、俺はどこを見てんだ?!
恐る恐るパンツを脱ぎ、兄ちゃんに背を向ける。やっぱ、チンコ見られるのは恥ずかしい。
「ひゃっ!」
兄ちゃんが、背後から乳首の辺りを触った。いや、布を当てている。
「ここ、押さえとけ」
手で、乳首に当てられた布を押さえる。布の先は俺の股をくぐって、後ろでどうなってるのかわからないけど…ねじってるのかな。
「ぐえっ、兄ちゃん、痛いっ」
ケツの間に布が食いこんだ。
「さっきも言ったけど、しっかり締めないと、肛門が痛くなるんだ」
ねじられた布は、俺の胴体をぐるりと回る。体の前に当てた布を前に垂らし、股の間をくぐらせる。
「ぐえっ」
また、同じ声が出た。もう一度肛門をしめつけられる。
兄ちゃんに、腰骨の辺りを軽く叩かれた。“できあがり”の合図だ。
「前袋の形を整えとけよ」
「前袋…?」
兄ちゃんは俺の前にくると、しゃがんで陰部を覆ってる三角の布をキュキュッと引っ張った。
「…よし、はみ出てないな」
毛のことだろうか、タマのことだろうか。腕を組んで満足そうに、兄ちゃんがうなずく。そんなにじっと見られたら、いくら布越しでも恥ずかしい…。
鉢巻を締めた後、地下足袋をはかされた。昔は地面のほとんどが土だから裸足だったそうだが、今はアスファルトの地面が多いので、火傷をするといけないから足袋をはくのだそうだ。確かに、真夏のアスファルトは熱い。うっかりマンホールの蓋でも踏もうものなら…。
「出発前のご祈祷が始まりまーす! 蔵の前に集合してくださーい!」
“下駄さん”が両手でメガホンを作って叫ぶ。どうやらあの人が、青年団のリーダーらしい。鉢巻とふんどしが様になっている。
「さ、郁真。行こうか」
俺の肩を押す兄ちゃんを見上げた。
かっこいい…鉢巻がよく似合う。ふんどし一丁でも、やっぱり勘治兄ちゃんは俺のヒーローだ。
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