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第4話
「これより、宮出しの儀を行います」
装束に身を包んだ神主さんが、おみこしに向かって礼をする。巻物みたいなのを広げる。蝉時雨の中、祝詞の声が混じる。
蚊取り線香をいくつか焚いてくれているけど、ヤブ蚊があちこち飛び回ってる。野郎の汗の匂いに、集まってくるんだろうな。
その汗臭い野郎は全員ケツ丸出しで、じっとうつむいている。…変な光景だな。俺もその一人だけど。
いよいよ、おみこしを担ぐ。
てっぺんには金色の鳥、赤白の縄と大きな鈴で飾られた、かなりデカいおみこしだ。
「勘治兄ちゃ~ん…」
「何だ?」
「何か恥ずかしいから…俺、目立たない所がいい」
いきなり背中をバーンと叩かれた。振り返ると、大きな声で笑う“下駄さん”だった。
「みんなケツ丸出しなんだから、気にするなって! 何だったら、俺が殿 を務めるから、俺の前に来な」
おみこしの左側、最後尾に“下駄さん”が立ち、その前に俺が立たされる。
「じゃ、俺が郁真の前にいてやる」
兄ちゃんが、俺の前に立った。キュッと引き締まった尻に、Tの字型の白い布が食い込んでいる。肌が浅黒いから、カッコいいな。
合図で一斉にしゃがむ。
「せーの!」
掛け声で、おみこしが持ち上がる。
「そーれ!」
「ワッショイ!」
掛け声に合わせて、おみこしが上下する。まるで、命が吹き込まれたみたいだ。真夏の空に、太陽を浴びて輝く金の鳥が飛ぶ。シャンッ、と鳴る鈴は、鳥の鳴き声みたいだ。どんな意味で鈴がついてるのかは知らないけど、みんなに命を吹き込まれた鳥の、鳴き声みたいに思えたんだ。
「本殿の前ッスー!」
後ろから“下駄さん”の声。かなり耳にビンビンくるぞ。
「ソーイヤサッ! ハイッ!」
“下駄さん”の腹からの声に続いて、ふんどし連中の“ソーイヤサッ!”という野太い声が響き、おみこしを高く揚げる。
俺の前では、兄ちゃんの上腕二頭筋と三角筋、それに背筋まで盛り上がる。
…触ってみたい…。
…って、何考えてるんだ、俺。
ワッショイ!
ワッショイ!
兄ちゃんの背中を、汗が伝う。セクシーだ。女にモテるだろうな。どっちかっていうとイケメンだし。
もう、エッチしたのかな。どんな風にエッチするのかな。兄ちゃんって、エロいことするのかな。
ピストン運動したら、あのお尻の横がキュッとくぼむのかな。
…ヤバい、変なこと考えてたら、ちょっと股間に来た。あまり考えないようにしよう。
それでも、気をそらそうとすればするほど、兄ちゃんの筋肉ばかり見てしまう。
あの背中に飛びつきたい。…抱きしめられてみたい。
何だか俺、変態みたいになってない?!
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