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第5話

 おみこしは神社を出て、住宅地や田んぼを通り過ぎ、スーパーに駅前、と練り歩く。 「お地蔵様ッスー!」  また、後ろから“下駄さん”の声。そうか、前の人に指示が聞こえるように、最後尾にいるんだ。 「ソーイヤサッ!」 「ソーイヤサッ!」  お堂の前で、おみこしは天高く揚がる。神様や仏様が祭られている場所では、敬意を表するため、おみこしを高く揚げるのだそうだ。  兄ちゃんの三角筋から背筋に向かって、汗が流れる。  下をチラッと見てみた。兄ちゃんのお尻。無駄な肉が無くて、縦に引き締まった筋肉で。お尻にも汗が伝う。力を入れると、横がキュッとくぼんで。  お尻…触ったら、兄ちゃん怒るかな…。  ヤバいっ、また下半身に来た!  肛門はギュッと締められてるけど、前袋は若干ゆとりがある。これ、勃ったら目立つよな…。  そうこうしてるうちに、コースは終盤。そろそろ神社の鳥居が見える。 「疲れてないか、郁真?」  兄ちゃんが、上半身ごと俺を振り返る。  たくましい胸板の上は、乳首が立っている!  ピンク色ではないけれど、汗で光る乳輪がツヤツヤしてて…きれい…。  って、俺のバカーッ! 「い、いや、大丈夫」  股間の膨らみがバレないように、少し内股になる俺。どうか頑張って押さえてくれ、前袋!  ずっと俺は兄ちゃんの筋肉ばかり見ていて、あまり周囲の目線が気にならなかった。恥ずかしいとも何とも思わなかった。  ただ、股間が少し膨らんでいるのが恥ずかしい…。  おみこしは無事、神社に帰る。時刻は午後三時。誰も熱中症で倒れたりしないが、汗だくだ。  一本締めをして、樽酒の鏡開きをする。柄杓で木の枡に酒が注がれ、ふんどし連中に配られる。 「お前には、これな」 「ひゃっ?!」  頬に冷たい物が当てられて驚いた。見ると、水滴をいっぱいまとった、ラムネの瓶だった。  いたずらっ子みたいに笑う兄ちゃんが眩しい。午後の日差しと、蝉時雨がよく似合う。  ふと、兄ちゃんの笑みが消えた。少し頬を赤らめて、目をそらす。  …何だろう…。 「おっ! 若いな、青少年!」 “下駄さん”に背中を叩かれて気づいた。俺――勃起してる!  完全に硬くなったアソコが、前袋を勢いよく盛り上げている。横からは陰部が毛ごと丸見えだろう。 「あ、いや、その…!」  思わずその場にしゃがんで、股間を隠した。 “下駄さん”は豪快に笑う。 「俺も同類だ。俺は祭りで血が騒ぐタイプだから、興奮したせいだけどな。お前さんのは、疲れマラか?」  見ると、“下駄さん”も勃起していた。前袋に、斜めに勃った竿や亀頭の形がハッキリと浮き出ている。…デカい。  俺のは“疲れマラ”で片付けてくれたけど、気まずい思いでラムネを飲み干し、ホースで水浴びをして着替えた。  その後、兄ちゃんといっしょに縁日見物をしたけど、俺の方からはなかなか話しかけられなかった。

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