6 / 7
第6話
布団に入っても、時計が十二時を回っても、なかなか寝つけない。俺は兄ちゃんの部屋に泊まっている。隣の布団にいる兄ちゃんは、もう眠っているだろう。明日は早いって言ってたから。
何度寝返りを打っても、勃起したペニスはおさまらない。どうしようもなくなって、俺はパジャマのズボンを下ろす。
いつもと違って、隣には兄ちゃんがいるんだ。タオルケットをしっかりかぶり、なるべく音を立てないように、慎重に擦る。
兄ちゃんの方をチラッと見た。俺に背を向けている。タオルケットの下は、ランニングシャツにトランクスの兄ちゃんが、お尻をこっちに向けているんだ。
兄ちゃんのお尻。ふんどしが食い込んだ、引き締まったお尻。あのお尻の間にペニスを挟んで扱いたら、きっと気持ちいいはずだ。
記憶にあるお尻を思い浮かべながら、兄ちゃんの方を向いてオナニーした。
あの上腕二頭筋に抱かれて、乳首が立った胸筋に顔を押しつけて、兄ちゃんのゴツゴツした手で、俺のペニスを握られる。
そんな想像をしたら、先走りがいっぱい出てきて、ぬちっ、ぬちっと音を立て出した。
一瞬、手が止まる。兄ちゃんの様子を、息を止めて見る。肩が規則正しく上下している。どうやら熟睡しているようだ。
これ以上、音を立てて兄ちゃんを起こしたら大変だ。俺は立ったままのペニスをズボンにしまい、布団を抜け出しトイレに向かった。
便座に座り、オナニーの続きをした。父さんや母さん、伯父さんや伯母さんが来ないだろうかとビクビクしながら。
俺の手はヒートアップする。
どうしよう…勘治兄ちゃんが好きだ…。
兄ちゃんにエロいこと、いっぱいされたい。キスされて、服を脱がされて、ペニスを擦られたり、口に含まれたり。
もう、頭の中は兄ちゃんとの濡れ場しかない。
兄ちゃん、大好き、俺に…いやらしいこと、いっぱいして…!
射精の直前、ペニスを下に向けた。ビュッ、ビュッ、と便器の中にザーメンが散る。トイレットペーパーで亀頭を拭き、切ない思いといっしょに流した。
兄ちゃんの部屋に戻ると、布団の上は枕とタオルケットだけ。兄ちゃんはいなかった。
どこに行ったんだろう。いくら朝早いからって、まだ夜中だから出勤じゃないと思う。トイレから戻るときにも全く見ていないから、トイレじゃないはずだ。
目が覚めて、喉が渇いて台所にでも行ったのかな。
俺はしゃがんで、兄ちゃんの敷き布団を撫でた。この辺りにお尻があって…。
膝の上に、涙が一粒落ちた。
どうしよう、俺、変態になったのかな。男同士なのに、いとこなのに、勘治兄ちゃんを好きになってしまった。
来年、こうして泊まりに来れるだろうか。兄ちゃんに思いを打ち明けたら、キモいって嫌われるかな。
また、いっしょにおみこし担いで兄ちゃんのお尻を見ちゃったら、今度は兄ちゃんのこと、押し倒すかもしれない。
俺は布団に横になり、頭からタオルケットをかぶり、声を殺して泣いた。幸い、兄ちゃんはすぐに戻らなかった。
毎年嗅ぐ、この部屋の匂い。懐かしい、兄ちゃんの匂い。それがこんなに苦しいものになるなんて…。
ともだちにシェアしよう!