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第2話

「無駄なお喋りを延々と聞かされてしまいました。ふざけてます?こっちは急いでるんですよ。さっさと出てきてくれればいいものを。そもそも自分ひとりで何とか出来ましたよね?」 イライラしているマリカから、盛大に文句を言われている。 部下であるマリカとはプライベートでもかなり親しい間であり、昔っから、かわいがっていた奴である。今ではお互い言いたいことを言い合えている関係となっていた。 「いや〜ごめんごめん。ついさぁ、犯人の身の上話を聞いちゃってさ」 「コウが待ってるんですよ。今日こそは早く帰るって言ってあったのに…ロラン、お前もだぞ?振り切って早くGOサイン出せって。何やってんだよ」 「申し訳ございません!」 最近はマリカとコウ、そしてロランも交えて4人で一緒に食事に行ったりしている。そこでロランが大食漢だと知り「俺も大食い!胃袋はセブンティーン並みだぜ!」と、意気投合していた。それ以来、何度かロランと二人で大食い選手権のような店に行っている。 「マリカ上官!ウルちゃんが泣いていると思います。お気に入りのロバのおもちゃが見つからないって…多分泣いてる。おもちゃはクローゼットにしまってあります。コウ様にお伝えいただけませんか?」 テレパシーでコウに伝えてくれと言うことだ。ロランが直接コウに連絡するより、マリカの方が早くて確実だからだろう。 「ああ…おもちゃ、了解すぐ伝えておく」 マリカの言葉を聞きロランはホッとしたように頷く。オーウェンとマリカは、ロランに気が付かれないよう目配せをした。 「じゃ、事情聴取とかあるでしょ。後は自分たちでやってください」 サッと踵を返すとマリカは外に飛び出して行った。こっちを見向きもしなかった。 「マリカ怒ってるぅ〜」 「怒ってますねぇ〜。明日はコウ様とウルちゃんと朝から3人で出かけるって言ってたから。それもあって、余計な問題に巻き込みやがってって思ってますよ」 もう一杯コーヒーを入れ直す。このままこの店内で警察からの事情聴取があるんだろう。長くなりそうだからと、オーウェンはロランの分と二杯コーヒーを入れる。 「ひとり21ドルね」 コーヒーを飲もうとしたら、後ろから声がしたので振り向くと、ドーナツショップの店長であった。テーブルにコーヒーを置き、店長を見上げた。 「ひとり21ドル!それでいいからっ!」 「えーっ!マジで?金取る気?」 「あったりまえだろ!あんたたち、コーヒーだって飲んでるでしょ!」 鬼の形相の店長に言われたことを理解した。遠目だけど、何となく店内も少し片付いているようである。店長は、なかなかのやり手のようだ。こんな状態でも鬼の形相だし、片付け出来るし… 言われた通り、食べ放題の料金である21ドルを支払う。今日はラッキーだと思ったのについていない。 ただ、時間がかかるかと思った事情聴取は、思ったより早く終了した。不幸中の幸いである。 オーウェンもロランも身分はしっかりしているし、警察の突入タイミングも指示したので、聞かれることはほとんどなかった。 「腹減った…ドーナツひとつ半だけなんて酷いよな」 「本当に…お腹空きました」 帰ってよし!と言われたので、オーウェンの車で帰宅中である。今日はドーナツを腹一杯食べてやるぅ!と意気込んでいたから肩透かしを喰らい、余計にお腹が空いてきたようだ。 このままどこか他のレストランへとも考えたが、時間はとっぷり暮れている。 「なぁ、ロラン。俺のとこ来る?冷凍のギョーザを沢山もらったから、いっぱいあるんだよ。知ってる?ギョーザ」 「ギョーザ!大好きです!いっぱいあるの?うわぁ〜、行ってもいいですか?」 「OK!じゃあ、仕切り直しとしますか」 胃袋がセブンティーン並みの大食漢だとはよく言っていることなので、頂き物は沢山ある。大食いのロランと二人で食べても充分な量のギョーザは冷凍庫に入っている。 「オーウェンさんって、反対側の建物ですよね?住んでるところ」 「そうそう、公邸の方。ロランがいる方に比べて寒いんだよな。何とかなんねぇかなって思ってるんだけどさ」 ロランが暮らす王宮は、コウやウルキ、乳母達がいる建物だが、オーウェンは政府与党の政策協議や様々な懇談会がある側の建物で暮らしている。 最近、護衛チームの最高司令官になったのをきっかけに、国王命令の下、オーウェンはそこに引っ越ししてきていた。 部屋は広いし、大きくて過ごしやすい。だけど、がらーんとしているからなのか、広い宿舎にオーウェンしか住んでいないからなのか、めちゃくちゃ寒くて困っている。暖房が足りないなと感じるほど、寒い時がある。 「オーウェンさん、料理出来るんですか?いつも自炊してる?」 「自炊ってほどのことしないよ?冷凍とかそんなのだから。まぁ得意ってわけじゃないけど。ほら、俺、胃袋セブンティーンじゃん?だから自分で作らないと、腹減った時どうしようもないからさ。ロランは?ロランは料理する?」 「えっと…ちょっと…だけ」 「お前…その言い方全くやらねぇな?ははは、大丈夫だよ。ギョーザは焼くだけだから。多分俺も失敗はしないと思うから」 ロランの答え方は料理が出来ないんだと言ってるようなもんだった。そう言っても「ちょっとは出来るんですから!」とロランはムキになり言い返してきて、それがオーウェンには可笑しくてたまらなかった。 ドーナツショップを出て、笑ったり、ムキになったりするロランを揶揄いながら馴染みの道を走らせてたら、宿舎にすぐ到着していた。

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