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第8話

「腹いっぱいだ…俺ら帰るけど、ロランはこれから本気でこれらを平らげろよ?明日、休みなんだからさ。ゆっくりしろよ」 飲んで食べてお腹いっぱいになったコウをマリカが負ぶっている。そのまま王宮の中庭を通り、反対側まで帰るという。 プライベートでも二人は常に戯れ合っていて楽しそうであった。それを見ているロランも嬉しそうであり、今日無事に告白出来てよかったなと思っていた。 「わっかりました!任せてください。これからいただいたドーナツを完食します!ね?オーウェンさん、食べれるよね?」 「余裕だろ〜!二人だったらすぐに完食だ」 コウとマリカを見送り、また二人でキッチンに戻った。二人になってもまだキッチンは暑い。他の部屋が寒いからここは居心地が良く思える。 「コーヒー飲むだろ?しかし…アイツら本当に仲良いよな」 「お二人を見てるだけで私は嬉しくなります。幸せそうですし、いっつも楽しそうなんです。だから本当にお似合いだなぁって。あ、コーヒーは私が入れます!」 「いいよ、ロランは座ってて。今日は疲れただろ?何とかなったとはいえ、コウに告白するのって緊張したと思うし」 それが一番気になるところだ。ケラケラと笑ってたとはいえ、ロランの本心はどうなのだろうか。無理をしていないだろうか。 「ありがとうございます。緊張したけど…言えてよかったぁ!オーウェンさん、本当にありがとう。一緒にいてくれたから、すっごく心強かったんだ」 うふふと、ロランは椅子に座り、足をぶらぶらと揺さぶりながら笑っていた。 ロランが笑うとオーウェンは嬉しくなる。ロランがぐすんと泣くと、オロオロとしてしまう。よく笑い、よく泣き、表情がくるくると変わるロランのことが、何故かいつも気になってしまう。 そんなことを、コーヒーを入れながら、何となくロランに伝えていた。 「だからな、お前が笑ってくれてると俺は嬉しいしホッとする。だけど、泣きそうな時はどうしたらいいかわかんなくなっちまうぞ?プーってしてる顔は面白いから…ははは、笑っちゃうけどよ。そうだなぁ…一番嬉しいのは、俺と一緒によく食べて、ケラケラ笑ってくれてるのがいいかなぁ。はい、コーヒー」 くるっと振り向きコーヒーを手渡した時、ロランが顔を真っ赤にしているのがわかった。 「ど、どうした?暑い?食べ過ぎたか?顔が赤いぞ、大丈夫…」 座っているロランの下に跪き、顔を覗き込んだ。近寄るとロランの顔は更に赤くなっている気がした。 「あの…それって…それってさ、なんで?」 「は?なに?それって?」 「だから…私が笑ってるのが一番嬉しいって…オーウェンさんが、」 「ああ、それ。それは…」 それは何でだろう。一番嬉しいのは…と自分で言っててもよくわからない。考えるとちょっとモヤっとする感じだ。 「それは…お前が俺の部下だからじゃないか?部下で…プライベートでも仲良くしてるから俺に近い存在だ。だから笑ってて欲しいって思うんだろうな。うんそう」 我ながらいい答えだ!答えててスッキリとした。そうだ、ロランは部下である。マリカも同じ部下である。部下たちの幸せを願うのが上司だろう。だからそう考えていたんだ。一番嬉しいって。 「…オーウェンさんって」 「なんだ、ははは。またプーってなって…赤い顔してたから心配したぞ?大丈夫か」 顔が赤いのは収まり、今度はプーっと頬がふくれている。何か言いたそうだが、具合が悪くないようでよかった。頭をポンポンと撫でて立ち上がり、自分のコーヒーを入れに向かった。 「もう…いいです!じゃあ、これからこのドーナツ全部食べちゃいましょう!ムカつくからやっつけちゃうんだ!」 「なんだよ、ムカつくって…ははは、お前は本当に面白いな」 二人でドーナツを食べた。ロランは好きだというイチゴのドーナツを嬉しそうに頬張っている。やっぱりよく食べて、ケラケラ笑ってくれてるロランがいいんだよなぁって思って見ていた。

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