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第24話

好きで好きでたまらない。 ロランのことを考えると、その気持ちが身体よりも先に飛び出して、走っていってしまうようだ。 「待ってくれ〜い!」と言っても待ってくれず。ロランを好きだという気持ちは、スキップしながら先に先に走り出していく感じである。 会いたくて会いたくてたまらない。 会えないと、毎日毎晩毎朝、悶絶して過ごす時間がある。何故今、二人は離れているのだろう。そう考えては、うんうん唸る。 神が試練を与えているのか。 俺たちは元々ひとつの身体で、それが何かの陰謀で無理矢理引き離されてしまったような感じだ。ロランと会えない日があるなんて、マジで「神よ!試練を与えるのやめてくれねぇ?」と思ってしまう。 お互いの仕事が忙しくなり、平日会えなくなっていたこの一週間は、電話やメッセージで「好き」「会いたい」ってワードを埋め尽くしていた。 二人の関係はすこぶる良好なのに、会いたくて会いたくて悶絶しても会えず、好きだ好きだと叫びたくても伝えられず、そんなフラストレーションが溜まる日々を過ごしていた。 誰かの陰謀だか何だか知らないが、マジ勘弁してくれよ~。ってね。 「…オーウェンさん!聞いてます?」 「ちょっと待て!このメッセージ打ったら聞くからさ〜」 「どうせ連絡してるのロランでしょ?これから会うんだから、別に今連絡しなくてもいいじゃん…」 「お前さぁ〜。好きは生きてるって、知ってっか?」 「それ、俺の最愛の人が言ったことだから。オーウェンさんの言葉じゃないからね」 挨拶もなくバーンと部屋に入ってきたマリカにブツクサと言われているが、今はそれどころではない。 この一週間出張もあり、ロランと離ればなれになっていたが、やっと明日から二人共休みが取れ、久々に会えることになっている。ウキウキも止まるわけがないじゃないかっ!だからマリカよ、ほっといてくれ… 『...それでね、カレーにしました!材料買ってきましたから、今日持っていっていいですか?』 『いいよ!もちろんだよ。楽しみだ。ロランが作ってくれるのか〜。俺の好きなロランが作ってくれる!って、みんなに大声で自慢したいよ』 『ええ〜やだぁ。恥ずかしいです~。でも、オーウェンさんはきっとカレーが好きだと思うんです。ああ~、初めて作るから心配です。上手く作れるといいなぁ』 『俺に指導してくれよ。一緒に作ろうな。明日から3日間休みだから泊まってくれるだろ?この一週間はお互い忙しかったから、休みの間はずっと家にいようぜ』 『うん!お家でゴロゴロしましょう!あ〜会いたいです!早くオーウェンさんに会いたい』 ………。 「お、れ、も...会いたいっと...はい、マリカ終わりました~!話とはなんでしょう」 ロランにメッセージを打つのをひと段落させた。「待て!」と言ったら、珍しくマリカは大人しくジッと待っていた。 今日の仕事は既に終了してるが、マリカと一緒にここでコウを待っている。何だか知らないが、話があるので一緒に王宮に来てくれと、言われている。 「うっわ...今、声に出してましたよ、ロランに送ったメッセージの内容。俺も会いたいって送ったでしょ?」 マリカが露骨に嫌な顔をする。だがそんなこともオーウェンは気にならない。なぜならば、この後ロランに会えるので超機嫌がいい。だから、なーんにも気にならない。 「マジ~?声に出てた?もうさ、俺は忙しいわけよ。それなのに、お前が急かすからさ~、聞いてるのかってさ~。だから打ってるメッセージも声にも出しちまうってもんよ。カカカっ」 「やべえな...この人。コウ、早く来ないかな。ま、いいや、あのですね、」 独り言なのか何なのか、失礼なことを相変わらず口走る部下である。 「ああーっ!ちょっと待て!返事が来たから!」 ぶるぶるとスマホが震え、メッセージを受信した。マリカの舌打ちが聞こえるが、オーウェンは、スタっと背筋を伸ばしてスマホに向かい合い丁寧にメッセージアプリを開いた。 『会いたいって言ってくれて、嬉しい!オーウェンさん好き。大好きです』 メッセージからロランの声が聞こえてくるようで、気分は最高潮となる。しかし、文字になって「好き」だなんて言われ、こんなに舞い上がる日が来るとは... それにこんな嬉しいことあるのかと、しみじみスマホの文字を眺めてしまう。文字でもロランは可愛いんだなと、スマホの画面を撫でてしまう。 「やめてくださいよ...めちゃくちゃニヤけてますって...強面がニヤけるのって、こわっ!ヤバいですって」 またマリカがとてつもなく嫌な顔をしている。 「ニヤけてる?ああ~、抑えられないのかもなぁ。すまんな、マリカ」 「付き合い始めって気持ち悪いですね。ずっとそんな感じですか?メッセージばっかり送り合ってたら、仕事も溜まるんじゃない?」 「仕事中はメッセージ送らないようにしようって、二人でルールを作ってるから大丈夫!つうかさ!今日は、お前らが話があるっていうから待ってるんじゃん。何だよ話ってよ。早くしろよ」 マリカがここに来なければ、もう既にロランには会えていたはず。コウを待つということもあり、時間だけが経っていくってもんだ。 「ですから、それを話しようと思って俺は来てるんです。なのに待てって言うから」 「あ〜、はいはい…えっと、お、れ、も」 と言いながら、オーウェンがまたロランに返事を打ち始めたところに、バーンとドアが開いた。 「マリカ!終わった!」 「コウ!大丈夫か?」 「やっぱりダメ。さっきテレパシーで伝えた通りだよ」 マリカ同様、挨拶もなくバーンと派手にドアを開けて入ってきたのはコウである。二人は深刻な顔をしているが、何故かマリカはコウを抱きしめている。 既に二人はテレパシーを使い、何かを話し合っているようだった。 「おいおいおいっ!ここは俺の仕事部屋!抱き合うの禁止!ったくよ~、なんだよ、俺は必要ないじゃん?じゃあ、ロランが待ってるから帰るな」 「ちょ、ちょっと待ったー!」 と、二人に止められた。

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