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セーラー服と学園祭 3

「南!これ持って行って!」 「何番席だっけ!?」 「それ3番じゃなかった?」 「ごめん柳、ありがと」 「それ運んだらオーダー!」 「ヤバイ想像以上に盛況でヤバイ死ぬ」 ヨコシマな考えなんてどこへやら、オープン時間から30分もすれば教室内は客でごった返しの状態になっていた。 女子が血眼で死ぬとか言ってたけど、学園祭が終わるころにはクラスメイト全員が死んでるんじゃないかってぐらい忙しい。 こんなに人が集まるのも、どうやら宣伝係がすごいらしい。 どういった宣伝をしてるのかは知る由もないけど、歩けばギャラリーがついてくるとかなんとか。 どんだけだよって思うけど、この忙しさのおかげでさっきまでの羞恥心なんか飛んで行った。 そしてこの忙しさのせいで、もう1つ飛んでしまったものがあって。 だから、 「やば…南すごく可愛い」 っていきなり話しかけられたから、口から心臓が飛び出るかと思った。 「うわ、マジだ南女の子にしか見えないね」 しかも何故か矢吹さんまで一緒にいる。 この人いるとロクなことがないから、本当に一番来てほしくなかった。 「ちょっと……矢吹がそういうこと言うの無理なんだけど」 「いや褒めてるじゃん!?貶しても怒るでしょ八雲さん」 「当たり前だろ……」 「はは。お前何言ってんの?って顔で見るのやめてもらっていいですかね」 さすがこの2人、さっそくコントを始めてしまっている。 しかもクラスメイトもお客さんも何人か笑ってるし。 「あの、席案内するんでとりあえず座りましょう!ね?」 「南ほんと可愛い」 「後でいっぱい聞くんで!」 すごい、八雲さんが今まで見たことないような顔をしてる…。 なんて言えばいいのかな…優しそうにも意地悪そうにも見える顔。 こんな顔をさせてるのがオレだって思うと、どうしてもニヤニヤしちゃう。 メニューを渡して2人から注文をとる。 八雲さんはアイスティーのストレート、矢吹さんはアイスコーヒー(甘党だからミルクとガムシロはいっぱい)と、クッキー。 クラスの女子に料理がうまい人がいて、どうやらその子のお菓子目当てで一緒に来たらしい。 矢吹さんの甘党網がどこまで広がっているのか、すごく不思議。 注文を伝えに戻ろうと体の向きを変えようとしたら、するり、とお尻に何かが触れた。 バッと抑えて振り返ったら、八雲さんが涼しい笑い顔で手をひらひらと振っていた。 大きな声を出しそうになった自分を抑え込んで、代わりにキッと少し睨んでみるけど効果は絶対にない。 なぜなら、今まで睨んできてもけっきょく「可愛い」って言われるから。 でも、こういうことをするのもオレだけなんだよなって考えたら、やっぱり少しは嬉しく思っちゃう。 飲み物を受け取って八雲さんたちに届けようとしたら、ふとお客さんたちの視線が八雲さんたちに集まってるのに気がついた。 矢吹さんもかっこいいし(絶対言わないけど)、たしかにあの2人が並んでたら雑誌の一面のように感じる。 嬉しい反面、ちょっともやもやと嫉妬。 自分でも小さいなって思うけど、好きで好きでたまらないからどうしようもない。 感情が顔に出ないように営業スマイルを作って、飲み物を2人に届ける。 「お待たせしました。アイスティーとアイスコーヒーとクッキーです」 「ありがと南」 「このクッキーの焼き加減…さすが…」 「ごゆっくりしてください」 もう少し八雲さんと話していたいけど、相変わらず客足は途絶えないから次の接客をしに行かなきゃ。 「あ、南。ちょっとだけ」 仕事に戻ろうとぢたところ、八雲さんに呼び止められた。 なんだろうと近づけば、こそっと耳打ちして 「この後大学行かなきゃいけないから帰るけど、明日また来るから。一緒にまわろう」 って言って、ちょっとほっぺにキスをしてくれて。 「やっ、くもさ…」 八雲さんは唇に人差し指を当てて「しー」って。 もう、これだから好きなんだってば! そこからのオレは八雲さんチャージができたことと、明日一緒にまわれる嬉しさでMVPを獲れるんじゃないかってぐらい仕事を捌いた。

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