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セーラー服と学園祭 5

学園祭3日目の日曜日。 仕事の頑張りが認められた南は、午後の自由時間が認められたらしい。 「着替えてくるので待っててください」 ってさっき言われたけど、当然ながらそんなことをさせるはがなく。 むしろクラスの女子に化粧直しをお願いした。 「可愛いよ南」 「もう、絶対、女装しません」 「フラグ立ててくれてるの?」 「違います!」 しばらくぷりぷり怒ってたけど一緒に回ってるうち、そんなご機嫌もとれてきた。 でも俺は知ってる。 なんだかんだ、可愛いって言われて喜んでる。 女装にまだ慣れてないかんじだけど、俺から可愛いって言われることは何より嬉しがるのが南。 とことん南を甘やかして、エスコート。 俺のために仕事頑張ってくれたし、今日は南にお金を払わせない。 ここが南の学校だなんてことまったく考えずに、普段通りに接して。 吹奏楽部の演奏を観て、柳の所属してる軽音楽部のミニタイブを観て、カフェでちょっと休憩。 今はお化け屋敷に来ていて、もうすぐ順番が回ってくるところ。 順番待ちしてたら、服の裾をきゅって掴まれた。 その手は少し震えている。南を見れば、俺と顔を合わせないように、怖くないですよっていう然とした顔をしていて。 「大丈夫」 「……」 掴んできた手を握り、安心させるように笑いかければ微かに頷いた。 本人はまったく無自覚なんだろうけど、デレとツンの割合というか比率というか…それが完璧すぎて怖くなるときがある。 南はよく俺に振り回されるなんて言うけど、それはこっちのセリフだって言いたい。 普段は甘えてくることのほうが多いけど、時折見せるそのネコのようなツンとした態度に、何度やられたかわからない。 繋いだ手は少しだけ震えてて、でも南の態度はあくまで怖くないを装ってる。 こういうところがたまらなく可愛くて愛しくて、今すぐめちゃくちゃにしてやりたい。 南が怖がってる時でもこんなこと考えてしまうんだから、本当に節操がない。 「呪われた世界へようこそ…」 白装束に血糊を付けた受付の人(霊かもしれないけど)、俺たちを案内する。 中は簡単な迷路になっているみたいで、出口までかかった時間によって何か景品があるみたいだ。 番号札を渡されて、中に入ったら受付の人が計測開始、出口にいる係の人が何分かかったかを計る。 高校生の学園祭でやるお化け屋敷としては、かなりしっかりと準備されてると思う。 南の手を握りなおせば、ぴったりと腕に身体をくっつけてきた。 なにこの可愛い生き物…。 出てくるまでに理性が保てるかどうか、けっこう自信がない。 「や、八雲さん」 「うん?」 中へ入る直前、小さな声で俺を呼ぶ。 南を見れば、少し顔を赤くさせていた。 「手……離したら、いやです」 そう言って、握る手が少し強くなった。 これ以上可愛いことをされたら、本当に暴走しそう。 「お前、もう可愛いこと言うの禁止」 「え?それどういう…」 南が言い終る前に扉は開かれて。 大丈夫だって伝わるように、手にぎゅっと力を込めて足を踏み入れた。

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