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セーラー服と学園祭 6

中に入ったら後ろのドアが閉められ、隣にいる南がわかる程度の暗闇に包まれた。 まだ目が慣れてないせいもあるだろうけど、けっこう暗い。 教室の冷房もガンガンに効かせてるようで、すでに寒く感じる。 さっきまで手を繋いでたはずの南は、いつの間にか俺の腕にしがみつくように掴まってて。 「だめですよ、離したら怒りますよ」 って震える声で言われても、ただただ可愛いだけなのに。 「こんな時にまで可愛くされても、手出せないけど」 「出さなくていいんです!」 「いいの?」 手を出さなくていいって言うから、掴まれてる左腕を引こうとしたら慌てた様子で抱きついてきた。 「だ、だめ!」 恐怖で怯えてる南はあまり見たことがないから、ついつい意地悪したくなってしまうから。 後で怒られるかもしれないと思いつつ、南の可愛いところをたくさん見たい気持ちのほうが勝る。 「八雲さんのばかぁ…手出してください…」 瞳に涙を溜めて懇願してくる南は、俺に抱き着いてきた。 いつも予想以上に可愛いことをしてくれるから、またどんどん好きになっていく。 「もう…ほんと、それ以上可愛いこと言うの禁止。ほら、行こう南」」 いったい、誰が今ここにいるのはお化け屋敷の中だとわかるんだろう。 おどろおどろしい雰囲気の中にいるはずなのに。 きっと隠れてる幽霊役の人がいたら、出るに出られない状況なんだろうな。 南は少しの間「ううう…」って唸ってたけど(これがまたすこぶる可愛い)、頭を撫でてやればすぐに喉が鳴って、おとなしく手を繋いできた。 結論から言えば最高だった。 もちろんお化け屋敷のクオリティーじゃなくて、南の可愛さが。 南が可愛くて、正直お化け屋敷どころじゃなかった。 なにか物音が鳴るたびに肩は跳ね。 行き止まりに行き着くたびに、何か出るんじゃないかと思い込み俺の後ろに隠れ。 幽霊が脅かしにくるたびに、俺に抱き着いて。 こんなの俺の身体がいくつあっても足りない。 もっと言えば、いつもとろとろの泣き顔ばっかり見てたけど、今日は恐怖で歪んだ泣き顔を見ることができた。 可愛さでいえば前者だけど、後者の怯えて小さくなってる南もまた可愛かった。 まあ、結論どんな南も可愛いんだけど。 出口を見つけてお化け屋敷の中から出た瞬間、緊張がとけたのかその場に座り込んでしまった。 「た、たてない…」 腰が抜けて歩くことができないみたいだ。 「いいよ南、俺に掴まって。ちょっと休もう」 南に背中を向けてしゃがめば、素直に背中に乗って来た。 いつもなら恥ずかしがって少し抵抗するところなんだけど、よほど怖かったらしい。 南を背負って、2人きりで休めそうな場所を探し始めた。 校舎内はどこもかしこも賑わっていたけど、ゆっくりできそうな場所は案外すぐ見つかった。 何も装飾が施されていない準備室のドアを開けたら、そこは無人で。 「南、とりあえずここで休もう」 背中にいる南に言えば、頷くのがわかった。 中へ入って、椅子に南をおろす。 「せっかく来てくれたのに…ごめんなさい」 「俺はこうして南と2人きりになれる時間ができて嬉しいけど」 いつもならここで「バカ」の一言でも飛んでくるけど、さっきのお化け屋敷が相当堪えたらしい。 「オレも…八雲さん、ぎゅってして」 なんて甘えてくるから、もう我慢できなそう。 「ぎゅってしてもいいけど…止められないかも」 止められないっていうのは、もちろんそういうこと。 学校だし、一応南に確認をする。 「忘れたい…忘れさせてよ、八雲さん…」 そう言って、南は腕を伸ばしてくる。 俺はその腕に導かれるように、ぎゅっと抱きしめて。 「俺のことしか考えられないようにしてあげる」 嬉しそうな南の顔に近づいて、まだ少し震えてる唇にキスをした。

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