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南悠太の回想 2
あの夏の日に助けてくれた男子高校生のことが忘れられなくて、あの人みたいに強くなりたいって思うようになった。
その時のオレはいつも兄ちゃんの背中に隠れてるような大人しい性格で、休み時間は自分の机から動かないような子どもだった。
そのせいで少しだけいじめを受けていて、学校に行きたくないって毎日思ってた。
そんな時に出会ったのが、八雲さん。
自分の弱い心をなんとかしたくて、何かスポーツを始めようと決意して。
定番の野球やサッカーみたいな集団競技は避けて、個人てできるようなものに絞った。
空手や柔道なんかを親に勧められたけど、ちょっとハードルが高かったからやんわり断った。
何をやればいいのかわからなくなって諦めかけた時、兄ちゃんが弓道教室が近所にあることを教えてくれて。
オレはすぐそこに通いたいって、生まれて初めてワガママを言ったらすんなり通わせれくれた。
で、オレはそこで運命的な再会を果たしたわけ。
まさか八雲さんに会えるなんて思ったなかったから、とにかく気持ちが抑えれなくてかなりうざったく纏わり付いてたと思う。
でもそのかいがあって、少しずつ反応してくれるようになってきた。
それがすごく嬉しくて、気がついた時には八雲さんのことを好きになってた。
家族以外の人にこんな感情をもったのは初めてだったから、自覚してからオレの毎日はキラキラと輝いてて。
「八雲さん好き!」
「……あっそ」
初めて好きって言った時はこんな感じ。
その頃は冷たい反応だなって思ったものだけど、今思えば驚きと恥ずかしさであんな反応だったんだなってことがよくわかる。
1回好きって言っちゃえばなんだかそれがクセになってきて、1日1回は「好き」って言わないとそわそわするようになってきた。
きっとオレは初めて八雲さんと会ったあの時から、ずっと好きって気持ちがあったんだ。
こんなに前からずっと好きでいられて、しかもどんどんその気持ちが膨れ上がるのってすごくない?
だから、オレは好きって言うたびに八雲さんと出会わせてくれてありがとうって、届いてるかわからない言葉を神様に言う。
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