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バカップル目撃情報 2
どうもお久しぶりの矢吹です。寂しかったでしょ?
ていうか、またあるとは思わなかったでしょ?
みんなが忘れた頃に俺出るから、そこんとこよろしく。
俺のバカップル遭遇率がなんか知らないけどやばくて、八雲さんはとにかく南からも変人扱いされ始めて軽く焦ってるんだよね。
でも俺だってバカップルがいちゃついてるところなんて見たくないわけよ。
本当にたまたま遭遇しちゃうんだよね。
だから、八雲さんから冷たい目で見られるのは不可抗力!
そんなこんなで、俺のストレス発散はここしかないので(自分で言っててめちゃくちゃ切ない)、お願いだから聞いてほしい。
隣街まで新作のスイーツを買うべく、下調べもバッチリして俺は意気揚々と電車に乗ったんだ。
そのお店は秋にならないとモンブランを販売していなくて、味も毎年進化している。
俺の秋はここのモンブランを食べないと始まらないと言っても過言ではない。
今年はどんな味のモンブランにっているのだろうとひとり妄想に耽っていたら、聞き覚えのある声が耳に入ってきた。
見れば、思った通りあのバカップルがいた。
マジで俺のエンカウント率ヤバくない?
ちょっと聞き耳を立てて見れば、どうやら2人は席の譲り合いをしているっぽい。
「南座っていいよ」
「いや、いつも座らせてもらってるので今日は八雲さんが」
「南に負担かけたくないから」
「オレだって八雲さんには負担かけさせたくないです」
すごくない?
電車でこんなこと言えるのすごくない?
周りのお姉さんたちなんかちょっと恥ずかしそうにしてるからね。
本人たちじゃなくて周りの人が恥ずかしがってるのヤバイ。
「もうやだ…折れそうになるから八雲さん座ってください」
「ふは、折れてよ。南のこと大事だから…お願い」
「ずるい、バカ、八雲さんずるい」
ここまで2人の世界に入り込めるのすごい。
普通に心から尊敬する、真似したくないけど!
まあ、どっちが座るか押し問答はまた南が負けるなって思ったところに、お婆さんが電車に乗り込んできた。
それにいち早く気がついた八雲が南の頭をぽんっと軽く撫でて、すぐにお婆さんを空いてる座席を案内してあげて。
「ありがとうねぇ」
「いえ、当然のことをしただけなのでお気になさらず」
そう言って見せた八雲さんの笑顔は女キラー。
男の俺でもくらっとしそうになるぐらい。
南に向けた笑顔じゃないのに、一番ときめいてたのは後でいじれる材料になるかな。
押し問答はお婆さんの登場により集結、けっきょく2人は腕がくっつくぐらい近づいて仲良く立つことになった。
すごいのが、つり革に掴まらずバランスだけで保つ八雲さんが、さりげなく南のことを支えてたこと。
南は南で遠慮がちに八雲さんの服の裾を握ってたんだけど、それも必要ないぐらいのサポートがエグい。
ちょっと電車が揺れた時、すっと八雲さんの手が南の腰に回ってよろめかないように支えて。
その度に南は嬉しそうにはにかむもんだから、それはそれは甘い空間が広がっていて。
これ以上見てたらモンブランに支障が出ると思った俺は、次の駅で車両を乗り換えたのだった。
その日食べたモンブランは、去年より甘くて珍しく胸焼けをした。
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