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【番外編】君思う、故に我あり 5
もうどれぐらい南を鳴かせて精を放ったのか、わからない。
俺も南も全力で求め合って、精という精を出し尽くした。
南がトバないように調整してたから、かなり辛かったと思う。
「はっ、あっ、」
俺の上でかひゅかひゅと細い呼吸をする南を見て、さすがに抱きすぎたと今さらながらに反省する。
「みなみ、ごめん」
「ん……」
僅かに頭を横に振って、大丈夫だと伝えてくれる。
この健気さがたまらなく愛しくて、苦しくならないように優しく抱きしめる。
そうすれば甘えるように頬を擦りつけてきた。
南の息が整うまで優しく抱きしめて、黙って背中をさすって待つ。
言葉とか何も発してないけど、お互いの気持ちが通じ合っているようでこの時間が尊い。
やがていつも通りの呼吸に戻った南が、もう大丈夫というように俺の上から降りて、隣にころんと寝転ぶ。
「はげしかった」
呼吸が整ったとはいえ、その声にいつもの明るさと瑞々しさがない。
事後の掠れ声もまたえろいなと内心で思いつつ、苦笑いを零す。
「ごめん。思ったより歯止めきかなかった」
「ん…久しぶりにあんな激しい八雲さん見たから…ずっとドキドキしてました」
へへっと恥ずかしそうに笑う南は、また腰に悪いことを言う。
あれだけ出して出して出し尽くしたのに、ちょっと反応してる自分を恨む。
「またすぐそうやって煽る」
南の前髪をあげて額にキスをすれば、今度はくすぐったそうに笑う。
「今日は、本当に、もうだめです」
「……そう言われると反対のことをしたくなるのってなんでだろうな」
「八雲さんがドSだからです」
俺は笑って、また額に唇を落とした。
終わったあとのいわゆるピロートークを少しして、さっきの七夕の話になった。
「短冊になんて書いたんですか?」
「南のこと書いたよ」
「もう、それはわかってます!」
そんなの当たり前でしょと言わんばかりに頬を膨らませた。
南もけっこう嫉妬心とか強い反面、たまに見せてくる脆さがまた俺を中毒にさせる。
「南の笑顔の輝きが、ずっと続きますようにって。書いた」
「おお…恥ずかしいです」
あの2人に見られないようこっそり飾った短冊には、たしかに俺はそう書いた。
重い思われるかもしれないけど、俺は南を手放す気はさらさらないし死ぬまで愛し続ける。これは絶対、もはや確定の世界。
だからずっと一緒にいられますようになんてナンセンス。
何を願うかってなった時に考えるのは南自身のことになる。
「そういう南はなんて書いたわけ?」
「……八雲さんが健康でいられますようにって」
ちょっと躊躇いがちにそう言った。
これは間違いなくタバコのことを言われてるんだろうな。
前に比べたらタバコを吸う本数は確実に減ったけど、完全にやめられたかとい言われればイエスとは言えなくて。
「あーごめん南。がんばるから」
「長生きしてください。オレ、八雲さんがいないときっと生きていけない」
「俺も南がいない人生は考えられないから。笑ってて」
けっきょく、俺たちは依存しあわないと生きていけないぐらい好きで。
俺の感情は全部南のためのもので、南の感情もまた俺のもので。
もしかしたら異常な愛の重さって言われるかもしれないけど、そうじゃないとお互いきっと生きていけないから。
この七夕っていう行事で、それが再確認できたいい機会かもしれない。
あとで右京さんにお礼を言おうと心に決めた。
▽7月7日:七夕
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