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酩酊珍道中 1

目の前は真っ暗。 手首はキツく縛られていて、ちょっとでも動く度に紐が食い込む。 聞こえるのはオレの荒い呼吸と、八雲さんの熱っぽい吐息。 音ではそこに八雲さんがいるってことがわかるんだけど、実際に目で見えないのがこんなにも不安になるなんて知らなかった。 「八雲さん…?」 小さく名前を呼んでみても、聞こえてくるのはやっぱり吐息だけ。 「八雲さん…八雲さん…!」 声が聞きたくて、オレの名前を呼んでほしくて呼びかけるけど、応えてくれる気配はない。 このまま口をきいてくれなかったらどうしようと思ったらたまらなく悲しくなって、布越しに涙が滲むのがわかった。 呼吸が嗚咽混じりになったところで、やっと八雲さんの動く気配があった。 「南……」 八雲さんの熱い手が、オレの頬を包む。 「南は…誰の?」 その熱い指先は頬、顎、首筋の順に滑るように降りてきて、最後は心臓の上に手のひらを置いた。 それだけで八雲さんに心臓を握られてるような感じがして、オレの鼓動が緊張と興奮で早鐘を打つ。 「オレ、は…八雲さんの…」 声が少し震えちゃったけど、顔はしっかり八雲さんの方に向けて言う。 八雲さんが僅かに安堵のため息をついたのがわかって、オレも内心胸を撫で下ろす。 「そう、南は俺の……」 そうして、不意にねっとりとしたキスをされた。 最初から舌を差し込んできて、全部を舐めとるかのようなキス。 いやらしくて、甘美で、舌先から溶けちゃいそう。 「ふぁ……」 室内に響くのは、いつもより湿っぽいリップ音。 それから、合間に溢れるオレの声。 視界を遮られてるから、いつもより敏感に音を感じ取っちゃう。 すごくえろいキスをしてる――。 そう思ったら、オレのソコは前も後ろも疼き始めて。 「南は、俺のだから」 ああ、そういえば、なんでこうなったんだっけ――。

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