143 / 238
酩酊珍道中 10
「やだ、八雲さん、これやだ…」
南の言葉を無視して、もう1本の帯で手首を拘束する。
解けないようにしっかりと縛ったから、ちょっと痛い思いをさせるかもしれない。
目隠しに手首を拘束された南を見下ろしてみる。
アルコールの入った荒い呼吸、不安そうに身をよじる姿はなかなか煽情的だ。
「八雲さん…?」
南が俺のことを呼んでくる。
いつもなら返事をして、頭を撫でるなりキスをするなりして南を落ち着けさせるけど…今はそういうわけにはいかない。
「八雲さん…八雲さん…!」
悲痛さのある声で名前を呼ばれて、南には申し訳ないけど背中がぞくぞくした。
きっと今、相当悪い顔をしてると思う。
返事をしないで沈黙を貫いてたら、南の荒かった呼吸が嗚咽混じりのものに変わっていった。
さすがに少し意地悪だったかも。
でも、これぐらいしておかないとお仕置きにならないし、腹の虫はまだ治まってない。
「南…」
手を伸ばして南の頬を包む。
珍しく俺のほうが体温が高いみたいで、いつも熱い南の頬は少しぬるい。
「南は…誰の?」
こんなこと、聞くまでもなく南の答える言葉なんてわかるのに。
実際に南の意志で、南の声で聴きたい。
「オレ、は…八雲さんの…」
南の声は少し震えてて、今さらながら怖がらせてしまったことを少し心苦しく思った。
「そう、南は俺の……」
そっと顔を近づけ、舌を入れてキスをする。
隅から隅まで、全部俺のものだって主張するように。
南とのキスはどろどろに甘くて、舌先から溶けてしまいそうな間隔に陥る。
まるで洗脳みたいだ、と少し思った。
南に少しでも好きだと思ってもらいたい気持ちは強いから、ある意味間違っていないのかもしれない。
そうしたら、俺も南に洗脳されてることになる。
「ふぁ……」
南から漏れた艶めかしい声に、不健全な付き合いだと内心で笑った。
「南は、俺のだから」
南の心臓の上に手を置いて、一際大きく鼓動が鳴ったのがわかった。
短く荒い呼吸を繰り返し、脚がもぞもぞと動き始める。
「やらしい南…お仕置きされるの、もしかして嬉しい?」
「嬉しく、ない…」
「そう言ってるわりにはもう感じてるみたいだけど」
「んあっ!うそ…ちがっ…」
さっきから反応をし始めているソコを服の上から触ったら、さっそく可愛い声が飛び出た。
そのまま手のひらで撫でるように触れば、腰が震え始める。
「んっ、あっ、うそ、もう…!」
触り始めてほんの少ししか経ってないのに、もうイく兆候を見せ始めた。
南は信じられないっていうように首を振って、違う違うと小声で言い続ける。
キスだけでも十分アルコールがまわって、しかもその状態で目隠しをされてるんだから…いつもより反応がすごい。
素面の状態でも敏感だと思ってたのに。またえろくて可愛い南を知って、全身の血が熱くなるのを感じた。
「イって南。今日はたくさん乱れた姿、見せて?」
手のひらに少し力を込めて、ぐりぐりと刺激する。
「あっ、もう、イっちゃ…イっちゃう…!」
痙攣が全身にまで広がり、服も下着も脱がないまま吐精した。
余韻で震える南を見ながら、過去最短記録だなと考えた。
「八雲さん…!」
すぐそこにいるのに、視界が遮られてるのはかなり不安らしい。
とにかく俺の名前を呼んで、確認をしきりにしてくる。
「いるよ」
「八雲さん…お願い、キス…キスしてください…」
「これ、お仕置きなんだけど」
少し冷たく言えば、びくりと身体を震わせる。
「ごめんなさい…ごめんなさい…」
泣きながらごめんなさいと言われ、少し胸が苦しくなってくる。
「今日は南を1人にさせた俺の責任もあるけど…もう少し、自覚して」
キスの代わりに、親指でゆっくり唇をなぞる。
柔らかくて、熱くて、それだけでくらくらしそうだ。
「する…します…もう、全部、やくもさんだけ」
「そう、全部…俺だけ」
南の言葉に満足して、親指を離してキスをする。
相変わらず上達しないキスが愛おしい。
ちょっと不意を突いた動きをすれば、毎回ぴくっと身体を硬ばらせるところなんかすごく可愛い。
「でも…」
唇を離してそう言えば、南はきょとんと首を傾げる。
「頭だけじゃなくて、ちゃんと身体にも覚えてもうから」
ともだちにシェアしよう!