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酩酊珍道中 10

「やだ、八雲さん、これやだ…」 南の言葉を無視して、もう1本の帯で手首を拘束する。 解けないようにしっかりと縛ったから、ちょっと痛い思いをさせるかもしれない。 目隠しに手首を拘束された南を見下ろしてみる。 アルコールの入った荒い呼吸、不安そうに身をよじる姿はなかなか煽情的だ。 「八雲さん…?」 南が俺のことを呼んでくる。 いつもなら返事をして、頭を撫でるなりキスをするなりして南を落ち着けさせるけど…今はそういうわけにはいかない。 「八雲さん…八雲さん…!」 悲痛さのある声で名前を呼ばれて、南には申し訳ないけど背中がぞくぞくした。 きっと今、相当悪い顔をしてると思う。 返事をしないで沈黙を貫いてたら、南の荒かった呼吸が嗚咽混じりのものに変わっていった。 さすがに少し意地悪だったかも。 でも、これぐらいしておかないとお仕置きにならないし、腹の虫はまだ治まってない。 「南…」 手を伸ばして南の頬を包む。 珍しく俺のほうが体温が高いみたいで、いつも熱い南の頬は少しぬるい。 「南は…誰の?」 こんなこと、聞くまでもなく南の答える言葉なんてわかるのに。 実際に南の意志で、南の声で聴きたい。 「オレ、は…八雲さんの…」 南の声は少し震えてて、今さらながら怖がらせてしまったことを少し心苦しく思った。 「そう、南は俺の……」 そっと顔を近づけ、舌を入れてキスをする。 隅から隅まで、全部俺のものだって主張するように。 南とのキスはどろどろに甘くて、舌先から溶けてしまいそうな間隔に陥る。 まるで洗脳みたいだ、と少し思った。 南に少しでも好きだと思ってもらいたい気持ちは強いから、ある意味間違っていないのかもしれない。 そうしたら、俺も南に洗脳されてることになる。 「ふぁ……」 南から漏れた艶めかしい声に、不健全な付き合いだと内心で笑った。 「南は、俺のだから」 南の心臓の上に手を置いて、一際大きく鼓動が鳴ったのがわかった。 短く荒い呼吸を繰り返し、脚がもぞもぞと動き始める。 「やらしい南…お仕置きされるの、もしかして嬉しい?」 「嬉しく、ない…」 「そう言ってるわりにはもう感じてるみたいだけど」 「んあっ!うそ…ちがっ…」 さっきから反応をし始めているソコを服の上から触ったら、さっそく可愛い声が飛び出た。 そのまま手のひらで撫でるように触れば、腰が震え始める。 「んっ、あっ、うそ、もう…!」 触り始めてほんの少ししか経ってないのに、もうイく兆候を見せ始めた。 南は信じられないっていうように首を振って、違う違うと小声で言い続ける。 キスだけでも十分アルコールがまわって、しかもその状態で目隠しをされてるんだから…いつもより反応がすごい。 素面の状態でも敏感だと思ってたのに。またえろくて可愛い南を知って、全身の血が熱くなるのを感じた。 「イって南。今日はたくさん乱れた姿、見せて?」 手のひらに少し力を込めて、ぐりぐりと刺激する。 「あっ、もう、イっちゃ…イっちゃう…!」 痙攣が全身にまで広がり、服も下着も脱がないまま吐精した。 余韻で震える南を見ながら、過去最短記録だなと考えた。 「八雲さん…!」 すぐそこにいるのに、視界が遮られてるのはかなり不安らしい。 とにかく俺の名前を呼んで、確認をしきりにしてくる。 「いるよ」 「八雲さん…お願い、キス…キスしてください…」 「これ、お仕置きなんだけど」 少し冷たく言えば、びくりと身体を震わせる。 「ごめんなさい…ごめんなさい…」 泣きながらごめんなさいと言われ、少し胸が苦しくなってくる。 「今日は南を1人にさせた俺の責任もあるけど…もう少し、自覚して」 キスの代わりに、親指でゆっくり唇をなぞる。 柔らかくて、熱くて、それだけでくらくらしそうだ。 「する…します…もう、全部、やくもさんだけ」 「そう、全部…俺だけ」 南の言葉に満足して、親指を離してキスをする。 相変わらず上達しないキスが愛おしい。 ちょっと不意を突いた動きをすれば、毎回ぴくっと身体を硬ばらせるところなんかすごく可愛い。 「でも…」 唇を離してそう言えば、南はきょとんと首を傾げる。 「頭だけじゃなくて、ちゃんと身体にも覚えてもうから」

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