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【番外編】だから断れないんだってば

八雲さんの家にお邪魔したら、ビニール袋にかぶさっているいつぞやのセーラー服がかけられていた。 クリーニング屋から受け取ってきたばかりなんだなと思った。 ハンガーもクリーニング屋のものだ。 八雲さんがお茶の準備をしている間に、こっそりとセーラー服を盗み見る。 あんなにぐっしょり汚したのに、そんな面影を見せないぐらいキレイになってる。 自分でちょっと洗ったって言ってたけど、やっぱり、えっちしたあとの汚れっていうのはバレてるはず。 自分で勝手に想像して恥ずかしくなってしまった…。 ぼっと熱くなった顔を、手を当てて冷やす。 「まーたすぐそうやって可愛いことをする」 「ひっ!?」 背後に回ってきた八雲さんにまったく気がつかなくて、情けない声が出てしまった。 「久しぶりに着る?」 「は……え?」 「着る?」 「いや……この前学祭終わったばっかなので……」 「でも、俺たち数日会えなかっただけで久しぶりって思うじゃん?」 「思います」 「それと一緒で、久しぶりに、セーラー服の南を見たいんだけど」 「……久しぶりに?」 「そう、久しぶり」 だんだん久しぶりの定義がわからなくなってきた…。 久しぶりって1週間あれば成立する? でも、たしかに1週間八雲さんに会えなかったら久しぶりって思う。 「ね?お願い」 だから、八雲さんのお願いは断れないんだってば…。 絶対に覗かないという条件で、セーラー服に着替えると約束をした。 ちょっと残念がってたけど、ここだけは絶対に譲れない。 無心になって着替えて、スカートに脚を通すと。 「!?や、八雲さん!」 バーン!と勢いよくドアを開ける。 「お、着替えた?」 「着替えた?じゃないですよ!」 「うん、やっぱりよく似合ってる」 品定めするかのような視線を受け、急に恥ずかしくなって隠れたくなった。 いや、でもそんなことしてる場合じゃなくて。 「スカート短くなってません!?」 「南の黄金比」 「だからっ……もう…いいです…」 だんだん八雲さんだから仕方ないなって思えてきて、熱がちょっとずつ冷えてきた。 「南の太ももすごく綺麗だから、短くして見せたほうがいい」 「ありがとうございます…?」 「こう…見えるか見えないかギリギリのラインがいいね」 「ちょっと、オヤジくさいです」 「へぇ…?」 にっこりと笑ってるけど、八雲さんの後ろには真っ黒で禍々しいオーラが見えている。 ヤバイ、八雲さんのスイッチを押してしまった。 「いや、今のは言葉の綾ですよ!?オヤジっぽいって意味ですからね!?」 「オヤジね、そう、そのオヤジにおそわれる気分は?」 すっと近寄ってきて、流れるようにスカートの中に手を入れてきた。 「んあっ」 爪先で鈴口を引っかかれる。 そこは本当に、弱い。すぐイっちゃいそうになる。 「あっ、ん…ゃ…」 ちょっとしかくりくりされてないのに、もう脚がガクガクしてきた…。 少しずつ射精感が高まってきて、ぶるっと身体が震える。 その瞬間を見逃さず、八雲さんはすっと手を引いた。 「っ!」 クると思ってた快感が訪れなくて、「くぅ…」と喉から切ない声が漏れ出る。 力も抜けて、床に座り込んでしまった。 「で?俺が、なんだっけ?」 「あう……鬼ぃ……」 その後は言うまでもなく、ひんひん啼かされた。 もう二度と、八雲さんのことをオヤジとは言わない。 ▽10月18日:ミニスカートの日 いつぞやのデジャブ。

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