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ワンナイト・ヴァンパイア 1

10月31日、朝。 世の中のパリピが1年で一番浮かれるといっても過言ではない、ハロウィンの日がやってきた。 ニュースですでに警官による警備体制が整えられているとアナウンサーが伝えているけど、心底どうでもいいと思いながら大学へ行く準備をする。 ハロウィンはどうでもいいけど、それをネタにして南の可愛いところをたくさん見たいとは思う。 定番の「トリック・オア・トリート」はきっと使えない。南はお菓子を持って来ると思う。 いや、でも…持ってるけどわざと「ない」って言う可能性もなきにしもあらず…。 そんなことを考えてるんだから、俺も相当浮かれてるなと内心で嘲笑。 テレビを消して、戸締りとガスの元栓を確認してから玄関に向かって靴を履こうとしたら。 ピンポン、とインターホンが鳴った。 荷物が届く予定もないし、矢吹か? でも矢吹なら事前に連絡が来ることが多いからきっと違う。 「……南?」 訝しみながらドアを開けたら、そこには学校へ行っているはずの南が俯いて立っていた。 予想外の来客で一瞬言葉に詰まったけど、南の様子がいつもと違ったからすぐに中へ入れる。 ソファに座らせるまで南は一言もしゃべらなかった。 こんなこと今までになくて、内心焦る。 「…学校さぼって来ちゃって…すみません」 お茶を用意して南の隣に座ると、ぽつぽつとしゃべり始めた。 「いいよ。何があったか話せる?」 角が立たないように穏やかに話しかけて、とにかく南を安心させるように努める。 「オレ…朝起きたときから、なんか変で…そのうち治ると思って家を出たんですけど…」 一度言葉を止めて、南は俺を見上げた。 南の顔は赤くて、瞳は潤み、息も少し弾んでいて下半身が反応しかける。 「でも…だめで…抑えられなくて…」 「抑えられないって…」 「八雲さんに会いたくて、触れたくて…おかしいんです、オレ…どうしよう…」 瞬間、脳天に雷が落ちた衝撃が走った。 言葉に表せないぐらい可愛い。 こんな可愛くてえろい南を残して大学になんか行けるはずがない。 「八雲さん…キスして」 「言われなくても」 顔を近づけて「舌だして」って言えば、素直に従う。 舌先をぺろっと1回舐めて、絡めながら唇を奪った。 腕を首に巻きつけてきて、一心不乱に俺の舌に吸い付く南にくらくらする。 「ん…やくもさん…」 ――もっと、もっと。 そんな南の心の声が聞こえてきそうなぐらい、今日はぐいぐいきて。 こんなに求められて、俺の頭も身体も足りないって訴える。 「ふっ……ん……」 何度も角度を変えて、その度に深く深くキスをして、南への愛しさが溢れ出る。 こんなに好きで、大好きな人に出会えるなんて俺は本当に幸福。人生は僥倖。 ちゅ、ちゅと響いてたキスの音はぢゅる…っとどんどん激しさを増していく。 「はあっ……みなみ……」 「ん…すき…だいすき…」 息継ぎで一度離れた俺たちの唇からは、どっちのものかわからない糸が繋がり、ぷつんと切れた。 「すき……食べたい、ぐらい……」 そう言って、南は電池が切れたかのように、俺に寄りかかって眠り始めた。

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