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ワンナイト・ヴァンパイア 3

八雲さんに噛み付いた瞬間、びくっと身体が強張ったて小さな呻き声が聞こえた。 少し罪悪感があるけど、それよりも八雲さんの血を吸える喜びが大きい。 「ん、」 八雲さんの吐息が耳にかかった。 それだけで興奮しちゃって、ぞくぞくっと背中から電気が流れる。 ぢゅるる、と音を立てて血を飲む。 今まで味わったなかで、間違いなく一番おいしい。 甘く蕩けて、それでいてくどくない。 香りも申し分なくいい。 軽く昇天しそうなぐらい、極上。 ごくごくと、全部飲み干しちゃいたいぐらいクセになる味――。 「み、なみ」 「ん…」 掠れた色っぽい声で名前を呼ばれて、五感すべてで八雲さんを感じる。 「はあっ…みなみ…」 八雲さんの声と吐息が熱を帯びはじめて、えろさが増す。 オレもだんだん興奮してきて、腰がもぞもぞと動いちゃう。 八雲さんがオレの服を掴んできたところで、首元から顔を離した。 「んは…おいしい…」 「みなみ…」 「八雲さんごめんなさい……ガマンできなかった」 「びっくりしたけど、大丈夫…強いて言えば身体がすごく熱い…」 「ヴァンパイアの吸血行為にはそういう効果があるって…本当かどうかは、さっきまで知らなかったんですけど」 「……今まで気づかなかった」 八雲さんが気がつかなかったのは当然だ。 なにしろ、オレだってこうなるまで全部わからなかったから。 ただ「青年期にその兆候が現れる」ことしか知らなくて。 前触れもなく、ある日突然くるなんて思わなかった。 しかもその欲が抑えられないだなんて…八雲さんっていう絶対的存在がいたから、こんなにひどくなったのかも。 「まあ、南が苦しそうにしてた理由がわかってほっとした」 「あの…怖くないんですか?」 恐る恐る聞いてみれば、八雲さんはくしゃっとおかしそうに笑った。 「言っただろ?南になら何をされたって嬉しいし、愛してるよ」 八雲さんの言葉がぶわっと身体中に響き渡って、燃えるように熱い。 本当に受け入れてもらえるか不安だったけど、オレには八雲さんしかいないんだって再認識した。 「好き…本当に、好き」 「ふは、吸血鬼になってもかわい」 おでこをこつんと合わせて、お互い見つめ合う。 八雲さんの顔は赤くて、目もとろんとしてて、初めて見るような表情。 もっともっとオレのことを好きになってほしいって思っちゃうから、相当欲張りだ。 「キスしよっか」 「……ん」 ちゅ、ちゅ、とついばむようなキスがくすぐったくて、ふふっと笑いがこぼれた。 オレのことを受け入れてくれて、気持ちもすごくあったかくて幸せで心が満たされる。 それを感じてるのは八雲さんも同じのようで、小さく笑ったときの吐息が甘く、柔らかくオレの肌に触れる。 もう、本当に幸せ。ずっとこうしてたい。 そう思うオレの心とは反対に、身体の疼きがふつふつと湧き上がってきて。 こんなキスじゃ足りないと喉の奥で八雲さんを求めそう。 身体を密着させてキスしてるから伝わる…オレも八雲さんも、お互い反応してる。 それでも八雲さんは戯れのようなキスをやめないし、オレのこと触ってもこないから…もう、いろいろ爆発しちゃいそう。 もっとすごいの欲しいって、伝えたい。 「う、わ」 オレは八雲さんの胸元の服を掴んで、ぐいっと後ろに倒れながら引っ張る。 不意打ちだったのか、もともと力が入っていなかったのか、八雲さんは簡単にオレの上に倒れ込んだ。 八雲さんはオレの顔の横に両手をついて、少し身体を起こす。 どうしたのっていうように首を少し傾けてるだけなのに、色気がすごくて言葉が一瞬詰まる。 「――きて」 手を伸ばして、八雲さんの首に絡める。 「今の、けっこうきた」 舌なめずりをした八雲さんは、ゆっくり覆いかぶさってきて。 オレは静かに目を閉じた。

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